高齢者の単身世帯に必要な「居住サポート住宅」制度

住宅セーフティネット法をご存じですか?

近年、日本では高齢者の単身世帯や低所得者、障害のある方など、住宅を確保するのが難しい「住宅確保要配慮者」と呼ばれる人々が急増しています。こうした方々が安心して暮らせる住まいを確保できるよう、2017年に「住宅セーフティネット法」が制定されました。しかし、この制度だけでは解決できない課題が明らかになってきたことから、2023年に大幅な法改正が行われ、新たに「居住サポート住宅」制度が創設されました。

この新制度は、単に住宅を提供するだけではありません。入居支援と生活支援を一体的に提供し、安心して住み続けられる仕組みを整えることを目的としています。特に、高齢者の「孤独死」や「家賃滞納」などに不安を抱えていた大家に対しては、残置物処理のサポートや家賃債務保証制度の強化など、具体的な不安解消の策が講じられました。これにより、これまで住宅の提供に慎重だった大家にも、制度への参加を促す狙いがあります。

「居住サポート住宅」の最大の特徴は、住まいと福祉の連携が制度に組み込まれていることです。例えば、日常的な見守りや、福祉サービスへのつなぎが義務づけられており、入居者が困難な状況に陥っても、地域の支援体制の中で生活を継続できるよう配慮されています。これは、単に住む場所を提供するだけでなく、「その後の暮らし」にまで目を向けた、これまでにない支援制度と言えるでしょう。

このような新しい枠組みは、全国的にも準備が進められており、2025年秋からの本格運用が予定されています。茨城県でも、すでに11の居住支援法人が指定され、県内の多様な地域で支援活動がスタートしています。水戸市や日立市などの都市部に加えて、県北・県南・鹿行地域でも、物件紹介や契約支援、生活相談、見守りなど、幅広いサービスが提供され始めています。

ただし、制度の普及に向けては課題も残っています。支援法人の地域偏在や支援内容のばらつき、大家の入居拒否感など、地域ごとに異なる問題に対してきめ細かい対応が求められます。茨城県では、こうした課題に対して、関係機関や地域住民との連携強化、情報発信の充実、大家向け支援の拡充などを通じて、より包括的な支援体制の構築を目指しています。

「居住サポート住宅」は、これまで選択肢の少なかった要配慮者にとって、住まいの「第三の選択肢」となり得る存在です。施設でもなく、従来の民間賃貸でもない、新しい形の地域共生型住宅として、今後の展開に期待が高まります。制度の本格始動を前に、いま私たちが制度の意義を理解し、地域全体で支えていく準備が求められています。

この問題を6月6日に行われる県議会一般質問で取り上げ、県土木部の取り組みを質しことにしています。