令和3年 第二回定例会 一般質問「ICTを活用した質の高い学びの実現について」

【村本議員質問】

 学校教育において、デジタル化は基盤的なツールとして、加速度的に有用性が増しています。新型コロナウイルスの影響により、小中学生に一人一台の端末を整備するGIGAスクール構想が前倒しされ、日常的に使用することにより、多様性への対応や教育の質の向上が期待出来る環境が整いつつあります。しかし、我が国において、経験の少ない事業でもあり、数々の課題や明確にしていかなければいけないことがあります。

 先日も、小学校で実際に端末を活用した授業を拝見させていただきました。

 その授業では、ログインから始める導入編であったり、小型の扇風機を回すプログラミングなど学年に合わせた授業を、先生が段取り良く指導をされ、児童がいきいきと取り組んでいたのが印象的でした。端末の活用により学びの幅が広がり、それと同時に、スムースに進めるための習熟度、そして、ちょっとした不具合が生じた時の対処方法、また、ICT端末を有効活用した授業の発案など先生の負荷も相当大きくなると感じました。

 今後、1人1台端末の環境を有効活用するためには、教師も児童生徒もまずは使ってみて活用の幅を広げることが重要です。当然、そこには課題も発生しますが、今こそ情報活用能力の育成をめざして、指導の方法を柔軟に変えていかなければなりません。

 兎に角、ICT端末は道具であり、活用のためには、習うより慣れろ、簡単な日常の作業で構わないので毎日使用することを検討してはどうでしょうか?

 各学校では、試行錯誤を通して、様々な工夫を重ねていこうとされています。そうした個々の学校で苦労された実例を教師間で共有するための「ポータルサイト」を至急構築する必要があります。活用に悩んでおられる先生が、幅広い実例に触れやすく、活用へと展開できるようなシステムであること、更に重要なのが、実際の現場での失敗や不具合事例を共有して、それを他の先生が調べて活用できるようにすることがGIGAスクール構想推進の鍵となると思います。

 このため、このポータルサイトへの登録のハードルを下げ、検索キーワードは豊富にして検索性を上げ、こんな活用の仕方があるんだ、こういう失敗をしたときはこうすればよいのかと気付ける仕組み作りが大切であり、実際に活用できる作業テンプレートの充実などの配慮も必要です。

 そして、県にも、相談やアドバイスを行う情報教育推進専門部署を設けていく必要があると思いますので、併せてお願いします。

 また、本県には、奇しくもコロナ禍においてコンテンツが充実することとなった、いばらきオンラインスタディがあります。特に、そのコンテンツの充実が素晴らしく、義務教育の範囲でアップロード数が3、400本以上、そして3百万回に迫るアクセス数となっており、5教科、ほぼ全ての学習内容がラインナップされていると伺っています。音楽や図画工作、体育などもアップロードされ、これ以外にもミュージアムパーク茨城自然博物館提供の家庭でできる教育普及プログラム(生活科・理科)も学ぶことができるなど見ごたえのあるものとなっております。このような茨城県の取り組みは、文科省のホームページ「学習支援コンテンツポータルサイト」の中でもリンクが貼られ、全国的に活用されています。

 これは、大変な成果であり、茨城県にとっての財産だと思います。更に活用していくための県の方針と県民への情報発信が必要ではないでしょうか。

 また、どうしても登校することが出来ない不登校児や病気のお子さんなどの学びの場の確保、そして夜間中学など学び直しの場での活用なども有効な活用方法だと思います。

 デジタル技術が茨城の学びを変えたと言われるような工夫を行っていただきたいと思います。

以上を踏まえ、いばらきオンラインスタディを活用した学びの確保を含め、ICTを活用した質の高い学びの実現のため、具体的にどのように取り組んでいくのか教育長にお伺いいたします。

【教育長答弁】

 ICTを活用した質の高い学びの実現についてお答えいたします。

 GIGAスクール構想により整備された1人1台端末は、全ての子供たちの可能性を引き出す質の高い学びを保障する上で、必要不可欠なツールであり、既に各学校では積極的な活用が始まっております。

 学校の教育現場においてこうしたICTを効果的に活用するためには、何よりも指導する教員のスキルアップが重要であります。

 県ではこれまで、教員一人ひとりのスキルに合わせて、端末の基本的な操作方法や、ICTを活用した協働的な学びを進めるための研修を行っておりますので、こうした研修内容の充実を図ってまいります。

 また、ICTに精通した人材である、ICT支援員やGIGAスクールサポーターの活用により、教員の指導力を向上させてまいります。

 あわせて、ICTを効果的に活用した先進的な授業や、トラブルが発生した際の対応など、授業づくりに役立つ幅広い情報を教員間で共有することができる、県独自のポータルサイトを、7月中旬を目途に立ち上げてまいります。

 さらに、このポータルサイトにおいては、県の指導主事等が中心となり、教員が必要に応じて相談し、アドバイスを受けることができる体制を構築し、教員への支援体制を強化してまいります。

 また、全国に先がけ、昨年度から配信をはじめました授業動画「いばらきオンラインスタディ」は、小中学校の5教科すべての単元をカバーしたライブラリーとなっており、授業だけでなく、家庭学習にも活用することで、児童生徒の習熟度に応じた学習が可能になりますので、今後は、市町村とも連携し、オンラインスタディの動画を活用した効果的な授業の実施や、家庭での学習方法の周知に努め、県内すべての児童生徒やその保護者に対し、積極的な活用を促してまいります。

 こうしたICTの活用は、教員にとって効果的な授業を組み立てる際、その選択肢を増やすことにも繋がっております。

 例えば、現在笠間市では、家庭での予習に授業動画を活用して、子供たちが知識を習得し、自分の考えを事前に持った上で授業に臨む「反転学習」に取り組んでおります。この授業で教員は、学びのコーディネーター役として関わることで、子供たちの主体的・協働的な学びの実現を図っております。今後、県といたしましては、こうした好事例を積極的に発信してまいります。

 また、議員ご指摘のとおり、この授業動画は、非常時における学びの保障や、不登校、病気欠席の児童生徒への学習支援にも、大いに役立つものでありますので、今後は、学校以外の関係機関への情報発信を強化し、活用の場を広げてまいります。

 このほか、県では、教員が授業において、いつ、どのような場面で端末を活用するのが効果的かを、教科ごとに例示した、「新たな学びのスタイル」を作成し、全市町村へ示したところであります。

 今後も、市町村と連携し、各学校で活用可能な学習教材の充実を図るとともに、1人1台端末を活用したオンライン授業や反転学習など、新たな学習指導方法の確立に取り組んでまいります。

 県といたしましては、ICTを活用したこうした取組を強化することにより、質の高い学びの実現を目指してまいります。