令和3年 第二回定例会 一般質問「学校における自然災害に対する備えについて」
【村本議員質問】
2011年3月11日の地震発生後、宮城県気仙沼市の大川小学校で、児童74名、教職員10名の尊い命が失われました。2019年10月に東日本大震災の津波被害に係る大川小学校事故訴訟に関して、最高裁において上告が棄却され、校長等や教育委員会に過失があったとして自治体に損害賠償を命じた控訴審の判決内容が確定しました。
当時、現場に居た教職員の皆さんも一生懸命子供達の命を守ろうとされたと思いますが、震災後の対応の過失に加え、震災前の学校の防災体制の不備が認められるという非常に重い判決が下されました。
学校において、児童生徒の命を守ることが最優先事項であり、先生はその能力を持ち、常に備えなければいけないというものです。
国も裁判の結果を重く受け止め、令和元年12月5日に文科省より、自然災害に対する学校防災体制の強化及び実践的な防災教育の推進についての依頼が発出されています。
その中で、学校及び設置者双方に ①学校安全計画の策定・見直し ②実践的な防災教育の実施 ③危機管理マニュアルの作成・見直し ④学校環境の安全の確保そして、⑤家庭、地域、関係機関との連携・協働 を要請しています。
特に、危機管理マニュアルの作成・見直しが重要で、複数の避難場所や避難経路の設定や専門家の助言、ハザードマップを超える災害への備えなどを求めています。
これらの反映状況について、共同通信のアンケートによると全国市町村の45%しかこの学校防災の水準を満たしておらず、茨城県においては、全国平均よりも高い水準であるものの、回答のあった39市町村のうち、現在水準を満たしている市町村は25市町村で、4割弱の市町村が満たしていません。
茨城県では、「学校防災に関する手引き」の発行や研修などを実施して、学校をサポートしていますが、こういったデータからも、現場では非常に悩んでいる現状が伺えます。
災害は、今日にでも起こるかもしれません。まずは、このような基本的なことを満足させることは、急務と言えるのではないでしょうか。期限目標をしっかり設定して、県としてしっかり取り組んでいただきたいと思います。
次に、この文科省の要請は、子どもの命を守る上で最低限度の事であり、これらを満たしているかどうかを学校毎に調査し、満たしていない場合は、何が難しいのかをアンケート調査を実施して丁寧に原因を探り、適切な対応を実施することが必要であり、更に、実効性があるかどうかを第三者が点検してアドバイスする所謂『学校防災アドバイザー』の派遣も制度化して、県教委として自然災害に対する学校防災のレベルアップを図る必要もあると思います。
また、裁判では、学校長の防災に関する資質にも言及しておりますが、私は組織としてのレベルアップも重要であると考えています。そこで、教職員には、県が主催しているいばらき防災大学等の受講を義務付け、防災士取得を奨励してはどうかと思います。
更に、目指すべきは、児童生徒が自分自身のみで逃げ切るための方法を教え、実行できるスキルを身に着けさせることではないかと思います。
防災教育は、現在も学校安全計画の中で、綿密に実施されていますが、子ども自身が防災の知識を身に着け、自分で安全を確保できるようにするために、そして更に実効性を上げるために、先生が居ない場合を想定し、自分たちで避難経路や配慮事項などを話し合い、実際に避難してみて振り返りを行うなどの実践的な避難訓練や防災の専門家を交えて実施する等の工夫も全ての学校において必要ではないでしょうか。
兎に角、学校での自然災害による被害を無くしていくところに、惜しみなく不断の努力を積み重ねていっていただきたいと思います。
そこで、学校における自然災害に対する備えについての更なる向上に対する具体策を教育長にお伺いいたします。
【教育長答弁】
自然災害が発生した際に、児童生徒の安全を確保し命を守ることは、学校において最優先すべき責務であると認識しております。
県ではこれまで、東日本大震災などの教訓を踏まえ、学校の防災力強化に向け、安全管理業務を担当する中堅教員などを対象に、災害対応に関する研修を実施するとともに、危機管理マニュアルの策定等を指導するなど、学校における防災組織体制の整備に努めてまいりました。
その結果、地震や水害、津波などを想定した危機管理マニュアルは、ハザードマップ内ではすべての学校が作成しておりますが、マニュアルで定めている内容が、国が求める「ハザードマップを超える災害の想定」などの水準を満たしていない学校もあります。
こうした現状を踏まえ今後は、想定外の災害に見舞われた場合などでも、教職員や児童生徒が、迅速かつ適切に対応できるよう、学校をとりまく環境の変化に合わせて、学校安全計画や危機管理マニュアルの定期的な見直しを促し、真に実効性のあるものとしてまいります。
具体的には、今後速やかに、各学校にアンケートを実施して、学校現場の様々な課題を把握し、マニュアルの見直しにあたっては、県防災士会など、防災に係る専門機関と連携して、学校にアドバイスを行うなど、実質的に機能する、学校防災体制を着実に整備できるよう支援してまいります。
また、防災設備点検や避難訓練における注意点などについて、専門的な視点から助言をいただくため、防災士など地域の防災活動に従事されている方の、学校への派遣を前向きに検討してまいります。
こうした取組のほか、古河市と取手市においては、昨年度、防災士や大学教授などの専門家による講演や、「学校版タイムライン」の作成、消防団・保育園との合同避難訓練など、地域や専門家と連携した防災教育を推進しておりますので、今後はこうした先進事例の課題や効果等を検証し、県内の学校に波及させてまいります。
また、児童生徒が自らの命を守るためには、主体的に行動する態度を身に付けさせることが大切でありますので、例えば、予告なしでの避難訓練を実施し、突然のことで慌ててしまうような場面であっても、適切な避難ができたかどうか、児童生徒に行動を振り返ってもらい、反省点を話し合う機会を設定するなど、自らが考え、判断し、行動できるよう様々な取組を推進してまいります。
次に、学校長はじめ教職員全体の防災対応力のレベルアップについてでありますが、現在、全ての学校を対象に、地震や洪水、津波といった災害別の知識習得に加え、学校における防災体制整備、防災教育の実践方法など、防災士の資格取得時に学ぶ内容と同様の項目を取り入れた研修を実施しております。
今後は、教職員が受講するこうした研修に、防災士などの専門家を講師として招くとともに、教頭及び校長などの管理職にも研修を行うことにより、学校全体で防災を認識し万全の備えが出来る体制を整えてまいります。
特に、学校経営の最高責任者である校長においては、災害が起こった場合に、素早い判断力や優れた統率力などが求められますことから、知識を習得するための研修に加え、地域との連携や、リーダーシップなどの研修を併せて実施し、資質の向上に努めてまいります。
県といたしましては、教職員はもとより、児童生徒の災害への対応力を向上させるとともに、関係機関や地域と連携した防災体制を強化することにより、学校における自然災害に対する備えに万全を期してまいります。