令和3年 第二回定例会 一般質問「道路インフラの老朽化対策における新技術導入と市町村への支援について」

【村本議員質問】

 我が国の道路インフラは、高度成長期にその多くが整備され、ほぼ同時期に老朽化を迎えており、その修繕が全国的に課題となっています。

 2012年には中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落という痛ましい事故もあり、道路法の一部が改正され、道路の老朽化に対応する措置が講じられるとともに、事後保全から予防保全に大きく舵が切られました。

 それに伴い全国で点検が行われましたが、早急に措置が必要とされながらも修繕が進んでいないことが全国的に問題となっております。

 県においても、令和2年3月時点で、県管轄の橋梁の要対策施設の措置着手率は44.2%、トンネルは16.7%と十分ではありません。県内市町村では、橋梁は17.1%、トンネルは0%と、更に深刻な状況となっております。

 持続可能な道路インフラの整備を実現するためには、新技術を積極的に導入し、効率化することが必要であると考えます。国においても、本年3月に「地方自治体に向けた維持管理への新技術導入の手引き」を作成し、地方自治体での新技術の活用を後押ししているところであります。県として、率先して新技術導入にチャレンジし、さらに市町村をリードしていくことが求められております。

 このために、県内の道路インフラの問題・課題を分析し、その解決に資するAI等の土木部門にとっては画期的な新技術の導入を失敗を恐れずにチャレンジする必要があります。

 また、技術者の人材不足も深刻であり、国土交通省によると町の3割、村の6割で橋梁保全に携わる技術者がいないとのことです。市町村からは土木技術職の応募がなく、採用できないとの話も聞いており、県としてもそうした実態を把握し、対策を講じていただきたいところであります。

 設備はよく手入れすればするほど長持ちするのは、日常の経験からも実感できるところであり、予防保全の重要性は論を待たないと思います。また、その方がトータルのコストが低く抑えられるとのデータもあります。

 今後、税収減などによる財政的な制約から、道路インフラの修繕にトリアージを導入せざるを得なくなることも想定し、新技術の導入とともに、県全体で得られた点検や設計に係る情報を有効利用できるようにデータベース化し、効率的・効果的な点検及び修繕に活用していくことも必要であると考えます。

そこで、道路インフラの老朽化対策における県の新技術導入と市町村への支援について、土木部長にお伺いします。

【土木部長答弁】

 道路インフラの老朽化対策における新技術導入と市町村への支援についてお答えいたします。

 茨城県の道路インフラにつきましては、老朽化が進む中で、損傷後に修繕を行う「事後保全型」の維持管理から、損傷が進む前に計画的に修繕を行う「予防保全型」の維持管理に転換しており、橋梁、トンネル等、施設毎の長寿命化修繕計画を策定のうえ、計画に基づく修繕を進めております。

 また、県内市町村におきましても、国と県が主体となって設置した道路メンテナンス会議を通じた支援のもと、長寿命化修繕計画の策定が進められ、令和2年度までに計画の策定が概ね完了したところでございます。

 平成30年度までに実施した点検結果における要対策施設については、令和2年度に創設された、国の「道路メンテナンス事業費補助」制度などを積極的に活用しながら、計画に基づく修繕を進めており、令和3年3月末での着手率は、現時点で取りまとめた速報値でございますが、県においては、橋梁で9割以上、トンネルで約8割、市町村においても、橋梁で約4割、トンネルで約3割と大幅に向上している状況にあります。

 一方で、長寿命化修繕計画に基づいた「予防保全型」の維持管理を推進していくためには、点検の更なる効率化・高度化により、施設の損傷状況を迅速に把握することが重要となってまいります。

 そのため、県におきましては、点検時にコンクリートのひび割れを自動検出する技術や、赤外線を用いて剥落箇所を検出する技術など、橋梁の点検を効率化する新技術の活用を進めております。

 また、ドローンやロボットの活用による点検の更なる高度化についても、国の土木研究所等と導入に向けた共同研究を行っているところでございます。

 さらに、点検で得られた多くのデータ等を一元的に管理し、維持管理情報の共有化や、その高度化を図ることについて、学識経験者等の意見を伺いながら、検討してまいりたいと考えております。

 このような、道路インフラの老朽化対策や、維持管理の効率化のための新技術の活用につきましては、国の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」においても、重点的に取組むべき対策として位置づけられ、本県にも、対策の推進に必要な予算が配分されたところでございます。引き続き、「5か年加速化対策」予算を最大限に活用しながら、新技術の導入による効率的な維持管理を推進してまいります。

 また、市町村に対しましては、これまでに、事業の進捗管理や、財政上有利となる国の交付金等を最大限に活用するための情報提供や、職員の技術力向上のための講習会の開催などの支援を行ってきたところでございます。

 今後は、これらに加え、県の新技術活用の実績や研究成果の情報提供による支援も行ってまいりたいと考えております。

 県といたしましては、今後とも、市町村への積極的な支援を行うことにより、県と市町村が一体となって、道路インフラの効率的な維持管理が図られるよう努めてまいります。