「子どもの意見表明等支援の推進について」

令和6年 第二回定例会 一般質問

【村本しゅうじ議員質問】

 子どもの意見表明等支援の推進についてお伺いします。

 令和4年6月に成立した改正児童福祉法では、児童相談所長等の意見聴取等の義務の対象となっている子ども等を対象に、意見表明等支援員(アドボケイト)が、子どもの意見又は意向を把握するとともに、それを勘案して児童相談所、都道府県その他関係機関との連絡調整等を行う「意見表明等支援事業」を、都道府県が実施できることとなりました。

 子どもの意見表明権とは、子どもアドボカシーと呼ばれ、虐待などで不安定な状態にある子どもが、自分自身の処遇や施設での不満など、自分の意見を職員に言えない状況にあるときに、第三者である意見表明等支援員がその意見を聴きとり、マイクとなって関係する大人たちに伝えることが出来る権利です。

 これまでも何度か主張させていただきましたが、私は、この子どもアドボカシーが一日でも早く、この茨城県において根付いてもらいたいと思っています。

 国では、令和2年度から実証モデル事業を展開しており、茨城県においても、令和6年度予算で、「こどもの権利擁護環境整備事業」として予算を確保し、意見表明等支援事業や啓発を行い、子どもアドボカシーを推進することとしています。

 先日、大分県や熊本県などで、子どもアドボカシーの推進状況をお伺いしてきました。これから、茨城県が制度を構築していくために重要なポイントは3つあると思います。

 まず、啓発については、関係する施設の職員や県民向けの研修で大人から理解の輪を広げ、子ども達に対しては、年齢に応じた内容を準備し、ワークショップ・ロールプレイングを活用しながら、丁寧に対応すべきであると思います。その中で、最も大切なことは、職員や子供たちの疑問にすべて答えることだと思います。

 次に、育成については、アドボケイト、意見表明等支援員は、弁護士やスクールソーシャルワーカーなどの専門職ばかりではなく、県民から広く集めることが重要であると思います。育成のための研修は、子どもアドボカシー学会や全国子どもアドボカシー協議会などでWebを活用した講座を開いており、受講者に対して補助するなど広く県民に理解してもらい、急速に立ち上げるための工夫が必要です。そして、育成人数の目標もしっかりと立案していただきたい。

 3つ目に、主体となって一緒に推進する団体の選定です。他都道府県での実績なども調査しつつ、熱意ある団体の選定をお願いします。

 最後に、わが県における子どもアドボカシーの推進スケジュール、ロードマップの策定です。先に挙げた3つの課題を踏まえながら、なるべく早く、しかし、生煮えの制度とならないよう慎重に進める必要があります。

 以上を踏まえ、今後の子どもアドボカシーの早期定着に向けた子どもの意見表明等支援の具体的な推進内容について、福祉部長にお伺いします。

【福祉部長答弁】

 子どもの意見表明等支援の推進についてお答えいたします。

 虐待などに伴う子どもの一時保護や、児童養護施設等への入所などの社会的養護に当たりましては、子どもの最善の利益を優先するため、その意見を尊重し、権利擁護を図る、いわゆる「子どもアドボカシー」の取組は大変重要であると認識しております。

 また、この取組を推進するためには、子ども自身が、自らの意見を形づくり、適切に表明できるよう支援する仕組みが必要となります。

 このため、県におきましては、改正児童福祉法の趣旨に則り、意見表明等支援員、いわゆる「アドボケイト」が、子どもの意見を聴き取り、又はその意見を代弁し、関係機関との調整を行う「意見表明等支援事業」の実施に向け準備を進めております。

 まず、事業の円滑な実施に当たりましては、児童養護施設や里親等関係者はもとより、子ども自身の制度に対する理解が不可欠です。

 このため、県では昨年度、児童養護施設の基幹的職員に対して研修を実施しましたほか、里親対象のセミナーを開催するなど、子どもの意見表明等支援の目的や重要性の普及啓発に努めてまいりました。今後は、事業の進め方や課題等について共有を図り、一層の理解促進に努めてまいります。

 そして、子ども自身に対しては、子どもの権利擁護について分かりやすく説明した「子どものための権利ノート」を改訂し、意見表明等支援員の役割や自分の気持ちの伝え方を具体的に解説するとともに、実際に支援員との交流や対話を重ねていく中で、子ども自身の理解促進を図ってまいります。

 また、支援員には、児童相談所等から独立性を確保しながら子どもとの信頼関係を築き、子どもの将来に関わる重要な意見を、慎重かつ確実に聴き取ることが求められております。

 このため、県では、児童福祉に対して理解があり、専門的な知識と経験を持った人材が所属する公認心理師協会や福祉専門職団体、 

NPO法人などを実施団体として選定し、協議・検討を進めてまいります。

 今後、実施団体を早急に選定のうえ、議員ご提案のウェブ講座などの研修制度も活用しながら、子どもの意見表明等支援制度をしっかりと理解し、実行できる支援員の育成を図ってまいります。

 さらに、これらの準備を着実に進め、本年10月を目途に、まずは子どもの処遇を決める重要な場面である一時保護中の子どもを対象に、支援員の派遣等事業を開始し、実践と検証を重ねながら、支援員の増員を図り、最終的には児童養護施設等に入所する全ての子どもが意見表明の機会を得られるよう取り組んでまいります。

 県といたしましては、子どもの最善の利益を優先する「子どもアドボカシー」制度の実効性を高め、社会的養護を必要とする子どもたちが、心身ともに健やかに成長できるよう取り組んでまいります。

【村本しゅうじ議員再質問】

 意見表明等支援員の育成について、福祉部長に再質問します。

 意見表明等支援員は、それまでの経験からアドバイスをしたり、誘導しないことが原則となっています。先日、現地調査で訪れた大分県や熊本県でも、県民から広く募集を行っていました。従って、専門職でないといけないということはなく、寧ろ、持続可能で且つ県民に受け入れられるためには、広く県民から募集して育成することが肝要だと思っています。そこで、意見表明等支援員の人材活用の方針について再度お伺いします。

【福祉部長再答弁】

 再質問にお答えいたします。

 意見表明等支援員の人材活用については、まずは、事業を円滑に開始するということを目的に専門の方をいれていきたいという風に考えてございますが、事業を実施していく中で、子どもの抱える背景、それから子どものニーズの多様性などを踏まえますと、専門家以外の知見が子どもの意見を聴き取る上で効果的である場合も想定されます。そういった場合を鑑みまして、多様な属性、強みを持つ支援員の確保というところも視野に入れながら取り組みを進めて参りたいと考えてございます。

【村本しゅうじ議員要望】

 子どもアドボカシーの研修などを県民に提供するなどして草の根からの啓蒙をみてはどうでしょうか。

 この事業は、子どもの権利擁護にとっては、非常に重要なものであり、「大人は自分の意見など聞いてくれない」とか「どうせ何言っても変わらない」などと諦めてしまっている子どもに希望を与える制度であり、非常に重要です。

 しかし、そこに魂が入っておらず、逆に子どもを傷つけてしまうことになっては、意味がありません。焦ることなく、しかし着実な推進をお願いします。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。

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