令和3年 第二回定例会 一般質問「エビデンスに基づく政策立案の推進について」

【村本議員質問】

 財政の健全化は、将来世代へのツケを残さない意味からも重要であります。

 知事も就任以来、選択と集中、失敗を恐れない挑戦を掲げ、行財政改革に取り組まれてきました。今年度は、茨城県総合計画も見直されることとなっておりますが、コロナ禍をはじめ時代の大きな転換点にある今、改めて政策効果に着目した徹底したワイズスペンディング※1を更に推進する必要があるのではないでしょうか。(※1:「賢い支出」という意味)

 それには、県民も一体となってオール茨城で推進することが、より一層の効果を上げることに繋がり、そのためには、政策の選択や効果、更には目標の設定が腹落ちすることが重要となります。

 県総合計画では、主要な政策にそれぞれ指標を設定し、過去、現状、目標値そして目標設定の根拠が記載されており、他県と比べても県民にとってわかりやすいと感じておりますが、今後は更に深化させ成果目標を意識した政策立案が必要だと考えております。

 例えば、「新しい安心安全」というチャレンジ目標には、「安心して暮らせる社会」という挑戦する政策があり、更にブレイクダウンされた「地域公共交通の維持確保」という施策、それを実現するための3つの主な取り組みという構造になっています。この政策の指標を「コミュニティ交通の利用者数」と定義して、現状より5%上乗せすることが目標値となっています。

 この「コミュニティ交通の利用者数(市町村が運営するコミュニティバス等の年間利用者数)」が現状より5%増加することで、「安心して暮らせる社会」や「地域公共交通の維持確保」を実現できるという整合性説明と併せて、中長期に渡る本来の政策目標に沿った目標値の設定が必要であると強く感じます。

 また現在、県では行政評価を実施しており、成果を確認して次の改善へと役立てる事後評価がメインとなっておりますが、政策を実施する前に、政策の課題把握、妥当性、有効性を検証する事前評価を実施することにより、実施後の見直し、途中での修正、効果の把握がより確実に行えます。

 このため、PDCAのPの前に、データ収集、分析、評価を実施し、エビデンスに裏付けられた効果的な政策、いわゆるEBPM※2を政策立案に積極的に取り入れるべきだと考えます。(※2:エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)

 ここでいうエビデンスとは、「因果関係にかかる命題で実証的検討を経たもの」の事であり、その肝はデータとロジックモデルであります。ロジックモデルとは、最終的に目指す効果の実現に向けた道筋を体系的に図示化したもので、事業の設計図に例えられます。どのような道筋で目標を達成しようとしているのかの仮説を示したもので、目的に沿った結果を出すためには必要なものとなってきます。重要な政策の立案の際には、データを使った客観性つまりエビデンスに基づき、このロジックモデルなどを使って事前評価をしっかりと行っていただきたいと思います。

 併せて、EBPMを取り入れるためには、様々な課題をデータにより分析し、且つ数学的理論に基づき効果やリスクを検証できるデータサイエンティストの存在が今後益々重要となり、その育成が急務であると思います。

 以上を踏まえ、エビデンスに基づく政策立案の積極的な推進について、知事の御所見をお伺います。

 【大井川知事答弁】

 本県を取り巻く環境が急激に変化し、時代の転換期を迎えている中、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行はもとより、少子高齢化の進展による労働力の減少、保健医療ニーズの増大などの様々な政策課題に対応するためには、客観的なデータを基に、より効果的かつ効率的に政策を立案し、その効果を検証していくことがこれまで以上に求められています。

 こうしたエビデンスの裏付けに基づいた政策立案は、限りある予算の中で、政策の有効性を高め、県民への説明責任を果たす上でも、非常に重要であると認識しております。

 私は、これまでも総合計画の策定や推進に当たりましては、県民のために何をするかが一番大切なのかという視点に立ち、課題の本質と政策の目標を見極めた上で、一つの分野の中で何が最も効果的な手法かを常に意識しながら、優先順位をつけて実行してまいりました。また、その成果及び課題を検証し、政策を修正、発展させていくためのPDCAサイクルを回すとともに、行政評価を実施する際にも、統計データなどをできる限り活用するよう努めてきたところでございます。

 具体的には、総合計画において、政策・施策の目指すべき水準をわかりやすく示すため、アウトカム指標を中心に合計125項目の数値目標を設定し、政策・施策の成果等を定量的に分析・評価する基準とするとともに、私自身でも関連する統計データや取組実績などを確認しながら一つ一つ達成状況をヒアリングし、施策や事業の改善につなげてまいりました。

 これらの取組は、実施した施策とその成果指標の因果関係を意識し、できる限り客観的なデータを踏まえて検証しているところであり、EBPMの概念に通じるものと考えております。

 このような中、国においては、EBPMを推進するため、各府省の統括責任者で構成する「EBPM推進委員会」を設置し、施策評価の「行政事業レビュー」の際に、ロジックモデルを活用した自己点検を試行しているところでございます。

 EBPMは、より厳格な因果関係を意識して、説明責任を明確にしていく取り組みであり、有用性があることから、県としましても、今後、政策立案等の判断や意思決定の根拠として、ロジックモデルや科学的なデータの活用手法のあり方を検討していく必要があると考えております。

 一方、国の試行においては、EBPMになじむ事業としては、因果関係が特定しやすいこと、検証には多くの労力と費用が発生するため、コストを比較して対象を選定する必要があることなどの報告が出されております。

 従いまして、まずはそれらを踏まえ、EBPMの対象事業の選定に取り組んでいくとともに、データの利活用に関しましては、大学や企業などの専門機関との連携などについても、検討してまいります。

 県といたしましては、エビデンスに基づく政策立案の浸透を図りながら、PDCAサイクルをしっかりと回していくことで、さらなる政策形成プロセスの透明化に努めてまいります。