令和4年 第三回定例会 一般質問「高齢者の移動手段確保のための未来型交通システムの構築について」
【村本しゅうじ議員質問】
高齢者の移動手段確保のための未来型交通システムの構築についてお伺いいたします。
高齢化社会における移動手段の確保は、社会全体で高齢者の生活を支えるために大変に重要な課題です。令和2年に実施された国勢調査によると、本県の65歳以上の高齢者人口は83万9,907人と総人口の約3割にのぼり、65歳以上の世帯員がいる世帯のうち単身世帯と夫婦のみ世帯が占める割合は5割を超えております。このような世帯では、年齢を重ね、身体機能や認知機能の低下が進み、自動車の運転が困難になると、気軽に移動して、知人との交流や生活を維持するための買い物などが難しくなってしまいます。
一方、交通事業者としても、採算性や人手不足の問題から、地域のバス等の公共交通は年々便数や路線が減少し、利便性が悪くなり、利用者が更に減少するという悪循環に陥っており、県や国もその重要性は認識しつつも、移動環境が十分整っているとは言えない状況です。
高齢者の移動手段がなく、家に閉じこもりがちになると、更に身体機能や認知機能低下が進み、高齢期の幸福度や安心度を引き下げ、引いては要介護や認知症のリスクが高まると言われております。このような高齢者の不自由な状況を解消することこそが、現役世代に希望の持てる未来を指し示し、将来不安を解消する方法であり、このような課題に対しては、格段に進歩しているデジタル技術を活用する以外には解決方法はないのではないかと考えています。
県内の先進事例として、境町では、2020年11月に自動運転バスを実用化、定常運転を開始していますし、高萩市では、時刻表にとらわれず、AIを活用して利用客の待つ場所に応じてルートを変えながらバスを走らせる呼出型最適経路バスの実証実験を実施しており、共に素晴らしい成果をあげつつあります。
これからの高齢者の移動手段には、自動運転による人手不足やコスト低減などの課題解決と共に、呼出型最適経路バスのような利便性が求められます。
現在、国で推進しておりますスマートシティ関連事業、デジタル田園都市国家構想の一環として、国の地方創生推進交付金等を活用して、先ほどのように自宅から目的地まで、利用したい時に、自由に利用できる自動運転バスと鉄道事業やタクシーとも組み合わせた複数市町村による広域交通ネットワークとして、未来型の交通システムを県主導で構築してはどうでしょうか。
このようなアイデアなどを含めて、高齢者の移動手段の確保に対するビジョンを県民に示し実現することで、不安を解消し、県民幸福度No.1の高齢者が住みやすい茨城県を目指していただきたいと思います。
以上を踏まえ、高齢者の移動手段確保のための未来型交通システムの構築について、政策企画部長にお伺いします。
【政策企画部長答弁】
高齢者の移動手段確保のための未来型交通システムの構築についてお答えいたします。
本格的な人口減少・少子高齢社会において、高齢者の暮らしを支える移動手段をいかに維持・確保していくかは大変重要な課題であり、その解決手段の一つとして、デジタル技術を活用した公共交通の利用環境の整備が期待されるところであります。
現在、国において、自動運転技術の実用化に向け、全国各地で様々な実証実験が進められておりますほか、日立市や境町など県内の市町村においても、デジタル技術を活用し、地域公共交通の活性化や利便性の向上等を目指す先進的な取組が展開されております。
また、県におきましても、デジタル技術導入により、公共交通の利便性向上に取り組む市町村を支援するため、令和3年度に「新たな移動サービス導入等支援事業」を創設したところであり、高萩市のAI技術を活用した呼出型最適経路バス「マイ ライド のるる」の導入に対し支援を行っているところでございます。
こうした中、特に自動運転の技術革新は、公共交通におけるドライバー不足や移動手段の確保など、地域課題を抜本的に解決する手段として大きな期待が寄せられているところであります。
本年4月には道路交通法が改正され、限定地域において運転者がいない状態で自動運転ができる特定自動運行が今後解禁となるなど、自動運転実現に向けた環境整備が着実に進められております。
一方、将来の自動運転の本格的運用に向けては、車両の安全対策基準や事故発生時の責任範囲の明確化など、多くの課題があると認識しております。
このことから、県といたしましては、事業者が安心して自動運転車両を運行するために必要となる、より具体的な基準の作成など、技術運用面の環境整備について国に働きかけてまいります。
また、デジタル技術を活用した、新たな交通サービスを持続的なものとしていくためには、これまでの実証実験で得られた成果を分析し、それぞれの地域の実情を踏まえた最適な交通サービスの導入を図るとともに、MaaSを活用し、鉄道やバスといった既存のネットワークとを結びつけて、シームレスに移動できる環境を構築することなどにより、利用者のさらなる利便性向上につなげていくことが大変重要であると考えております。
このため、県といたしましては、県内外の実証実験などを通じて得られた知見を、関係者間でしっかりと共有するなど、市町村や交通事業者等との一層の連携の下、デジタル技術も活用しながら、高齢者の移動手段の確保に取り組んでまいります。
※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。 #茨城県議会 #日立市