令和3年 第二回定例会 予算特別委員会質問「GIGAスクール構想における諸課題への対応について」

【村本しゅうじ議員質問】

(ア) タブレット端末更新時の予算についての認識

 初めに、GIGAスクール構想における諸課題への対応についてお伺いいたします。

 私は、本定例会の一般質問において、「ICTを活用した質の高い学びの実現について」質問をさせていただき、教育長からは、「ICTを活用した取り組みを強化することにより、質の高い学びの実現を目指していく」との答弁をいただきました。

 このように、ICTを活用した取り組みは、まだ始まったばかりではありますが、私は、一般質問で指摘した以外にも様々な課題があると考えております。

 まず、ICT端末や周辺機器の更新に係る予算の確保についてであります。

 コロナ禍の中、子どもたちの学びを保証できる環境の実現に向け、1人1台のICT端末の整備が実現しました。

 しかし、ICT端末の寿命は、長くても5年、往々にしてそれよりも短いのではないでしょうか。

 近い将来、県内の小中学校において、ICT端末の更新時期を迎えるに当たり、大きな課題となるのが、端末の更新に必要な予算の確保でありますが、国では更新に必要な予算は考えていないとの報道もあります。

 そこで、今後、端末の更新に必要な予算の確保について、県としてどのように考えているのか、教育長にお伺いいたします。

【教育長答弁】

 1人1台端末の整備につきましては、GIGAスクール構想により、国主導で、小中学校においては国の10/10負担で整備が済み、また高校についてはBYODで整備しているところでありますが、委員御指摘のとおり、小中学校においては今後数年で必ず更新する必要が生じます。

 更新時の費用負担につきましては、現時点で国からは正式な方針が何ら示されていない状況でありますが、地域間格差を生じさせないためには、国としての何らかの支援が不可欠なのではないかと考えておりますので、今後の国の動向を注視してまいります。

【村本しゅうじ議員質問】

(イ) 必要な予算確保に向けた県の対応

 市町村の財政状況によっては、必要な予算を確保することができず、保護者に端末の更新費用の負担をお願いする、あるいは、個人の所有する端末を使用するBYODに切り替えたりすることも考えられ、市町村間において格差が生じる可能性があるのではないかと私は大変懸念しております。

 また、劣化によるバッテリーの更新や持ち帰りのための追加のACアダプター、操作性向上のためのマウスといった周辺機器にも同様の予算上の問題が生じてきます。

 端末の整備に当たっては、各市町村が、それぞれ事業者と契約をすることとなりますが、財政状況によって、整備内容に格差が生じないよう配慮することが重要だと私は考えております。

 そこで、市町村の状況を調査するとともに、県として予算確保も含めた方針の打ち出し、国に対する必要な予算の要望などを早急に行う必要がありますが、県としてどのように考えているのか、教育長にお伺いいたします。

【教育長答弁】

 引き続きICTを活用した個別最適な学びを推進していくためには、小中学校における1人1台端末の更新時の費用負担のあり方が、今後の大きな課題であります。

 そうした中、現時点で市町村が端末更新時の費用負担について、どのような意向を持っているのか確認する必要がありますので、まずは県内全ての市町村教育委員会等で構成する「教育ICT推進協議会」を通じ、速やかに意向調査をしてまいります。

 また、それぞれの市町村の財政力により格差が生じることがないよう、県としては、市町村の要望をとりまとめ、国に対し、必要な財政措置などについて要望してまいります。

【村本しゅうじ議員質問】

(ウ) デジタル教科書の有償配布についての県の認識

 次に、デジタル教科書の導入についてお伺いいたします。

 2年前、「学校教育法等の一部を改正する法律」が施行されたことに伴い、紙の教科書に代えてデジタル教科書を使用することができるようになりました。

 国は、2024年度の次期教科書改訂に合わせた本格的な導入を目指しているところであります。

 我が国において、紙の教科書は、法律に基づき、義務教育諸学校に通う全児童生徒に無償で配布されております。

 一方、紙の教科書とほぼ同じ内容であるデジタル教科書は有償となっています。

 不公平が発生しないように、紙の教科書と同様に、国が無償で配布すべきではないでしょうか。

そこで、デジタル教科書の無償配布について、県としてどのように考えているのか、教育長にご所見をお伺いいたします。

【教育長答弁】

【教科書の無償給与】 

 現在、義務教育で使用する教科書につきましては、「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」などにより、就学義務と密接な関わりのあるものとして、すべての児童生徒に無償で提供されております。

【学習者用デジタル教科書普及促進事業】

 一方、文部科学省においては、GIGAスクール構想により小中学校で1人1台端末が実現し、今後はICTを活用した学びの出発点としてデジタル教科書が必須であるとの考えから、今年度、デジタル教科書の使用による、効果や影響などを調査する事業を開始したところであります。

【国の方針】

 こうした中、今月3日に、政府の「教育再生実行会議」から、「デジタル教科書に関する全国的な検証の結果も踏まえ、紙の教科書との関係、無償措置の対象、検定・採択などの制度上の位置づけや、標準的な規格や機能について、財政負担も考慮した上で、今後の在り方を明確にする」との提言が示されました。

【今後の対応】

 教科用図書の費用負担に関する考え方については、基本的に紙媒体であろうが、デジタルであろうが変わる理由はなく、国が負担すべきものと考えております。

 県教育委員会といたしましては、令和2年11月に全国教育長協議会を通じ、「令和3年度文教予算に関する特別要望」において、デジタル教科書の無償化を要望したところであり、引き続き、7月の「令和4年度国の施策並びに予算に関する要望」においても、必要な財政措置について要望してまいります。

【村本しゅうじ議員質問】

(エ) デジタル教科書の活用方針

 現在、国は、デジタル教科書を使うことに伴う、児童生徒の視力への影響や教育効果を調査する実証事業を行っており、県内では、28市町村の小学校、26市町村の中学校、合わせて242校が参加していると伺っております。

 しかし、この実証事業では、デジタル教科書の提供範囲が、1校当たり1教科と、市町村教育委員会で、教育効果や適用教科の選定をしようにも、情報量が多くはなく、判断できないのではないかと私は感じております。

 国においても方針を示すこととなりますが、県としても国の方針の背景をしっかりと把握するために、各市町村による実証事業の結果を独自に分析・評価を実施していくべきであると思います。

 もはや教科書のデジタル化は、世界の趨勢であり、避けて通れないものと思いますが、読解や記憶には、紙媒体が優位だとする研究結果もあると聞いております。

 デジタル教科書の豊富なデータ量や検索のしやすさ、音声・動画の活用といった、デジタルならではのメリットを最大限引き出していただき、紙の教科書とのベストミックスとなるような茨城県独自の使用方法を見出していただきたいと思います。

そこで、今後、デジタル教科書の活用方針について、県としてどのように考えているのか、教育長にお伺いいたします。

【教育長答弁】

【本県の学習者用デジタル教科書普及促進事業参加状況】

 今年度、国は「学習者用デジタル教科書普及促進事業」として、デジタル教科書の使用による、効果や影響などの調査事業を開始したところであり、本県では、29市町村242校がこの事業に参加しております。

【紙の教科書とデジタル教科書の認識】

 紙媒体の教科書については、一覧性に優れているなど利点がございます。

 一方で、デジタル教科書につきましては、直接画面に考えを書き込むことができ、試行錯誤が容易であることから、主体的・対話的で深い学びのためには効果的でありますほか、動画や音声読み上げ機能などのデジタル教材と組み合わせて使用することにより、指導の幅が広がるなどの利点がありますが、子供たちの目の疲れなど健康面に留意する必要もございます。

【デジタル教科書の活用】

 デジタル教科書の活用にあたりましては、こうしたプラスとマイナス両面の評価を理解した上で、教育効果や健康面への影響等に関する検証を行うことが重要であると考えております。

 国の調査においては、デジタル教科書の導入教科数が1校当たり1教科にとどまり、各学校だけではその検証が難しいことから、県におきましても、各市町村の利用状況を集約・検証して、デジタル教科書の有益性を独自に分析してまいります。

 県といたしましては、こうした検証結果を踏まえ、デジタル教科書の効果や影響を確認するとともに、国の動向を注視しながら、児童生徒にとって質の高い学びの実現に向け、紙の教科書とデジタル教科書とのベストミックスの利用促進について検討してまいります。

【村本しゅうじ議員質問】

(オ) デジタルシティズンシップの推進

 昨今、デジタル化の進展に伴うが故のリスクもクローズアップされております。

 そのため、デジタル社会を生き抜いていく子どもたちが、そのリスクを理解し、安心安全に利用することができるよう「デジタルシティズンシップ教育」の推進が必要であると私は考えております。

 デジタルシティズンシップとは、「情報技術の利用における適切で責任ある行動規範」のことであり、子どもが、適切に情報テクノロジーを活用するための規範や基本的知識を身に着けていくことは、大変重要です。

 このことは、デジタルの利用を抑制するという観点ではなく、有効活用することができる人材育成を目指すものでありますので、ICT教育の中で、今後、ますます重要度が増してくるのではないかと感じております。

 子どものインターネット利用を取り巻く状況は、ネット上でのいじめ、フェイクニュース、有害情報や画像被害など、様々な課題がありますが、これからの時代の荒波を乗り越えていかなければならない子供たちには、ポジティブに活用していただきたいと思っています。

 そのため、利用に当たってのルールや規制を行うだけではなく、判断や自律に重きを置く、デジタルシティズンシップの考え方を取り入れていくべきではないでしょうか。

そこで、今後のデジタルシティズンシップ教育の推進について、県としてどのように取り組んでいくのか、教育長にお伺いいたします。

【教育長答弁】

【情報活用能力について】

 情報が氾濫する現代社会においては、情報の真偽や必要性を見きわめ、それらの情報を有効に活用していく力が求められており、情報活用能力、特にデジタルシティズンシップの育成の重要性は高まっております。

 このため、学校においては、情報技術の利用に関する、適切で責任ある行動規範の醸成を図っているところであります。

 例えば、小学5年生の社会の授業では、間違った情報や有害な情報がSNSなどを通して拡散する可能性があることを取り上げ、確かな情報を収集・選択することの重要性を学習しております。

 また、中学1年生の国語の授業では、さまざまなメディアの情報が発信者の意図により編集されている可能性があることに気づき、ほかの情報と比較・検討して判断することの大切さを学んでおります。

【今後の対応】

 今後、デジタル教科書が本格的に導入され、ICT機器を活用したり、インターネット等の情報に多く触れるようになることで、こうした教育は益々重要になってまいります。

 県といたしましては、情報活用上のトラブルやリスクを子供たちが理解した上で、情報を適切に取捨選択する実践的な指導を通して、自らの判断により情報を正しく安全に活用できるデジタルシティズンシップ教育の強化に取り組んでまいります。

【村本しゅうじ議員要望】

 答弁ありがとうございます。

 折角、教育現場でデジタルを活用して、教育を飛躍的に変革できるチャンスでもあります。慎重かつ大胆に、取り組んでいただきたいと思います。教育長ありがとうございました。

※:正式な議事は、茨城県議会ホームページをご確認ください。