「障害者差別解消法改正に伴う合理的配慮提供の義務化への対応について」

令和6年 第二回定例会 一般質問

【村本しゅうじ議員質問】

 障害者差別解消法改正に伴う合理的配慮提供の義務化への対応について、お伺いします。

 令和3年に障害者差別解消法が改正され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供の義務化が本年4月より施行されました。この法改正は、障害を持つ人々が社会のあらゆる場面で公平な扱いを受け、自己実現を図るための重要な一歩です。しかし、障害者の期待にすべて応えられないかもしれない、また、事業者も経営に影響するような過度な負担とのバランスが難しいため、障がい者と事業者との間で、建設的な対話による代替案などの合意を見出せるかが大きな課題であると想定されます。

 茨城県には、議員提案により平成27年4月に施行された「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」があり、茨城県としても、この法改正に対応して、このような課題を乗り越えて、より一層障害のある人々が差別のない生活を送れるよう支援する必要があります。

 まず、改正された法の内容や企業のとるべき具体的な行動について、広く県民への認知度を上げるとともに、事業者だけでなく障がい者自身に対しても、合理的配慮に関する正しい理解を広げる必要があります。

 そして、今後実例などを蓄積しそれらを基にした、事業者に対する実務的な研修や県民への周知も有効ではないでしょうか。

 是非、積極的なプッシュ型の啓蒙および実効性ある研修をお願いしたいと思います。

 次に、今後は、合理的配慮の提供の円滑な運用を行っていくうえで相談体制の充実が重要になると考えます。

 内閣府としても、障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」を開設して、対応しています。そして、茨城県でも、茨城県障害者差別相談室を設置して、相談対応体制を構築していると承知しております。

 合理的配慮という言葉はあいまいさを持っており、何が合理的なのか、どのような配慮が必要なのかについての解釈は立場によって変わり、企業や団体が具体的な施策を講じる際に、どこまで対応すれば良いのか判断が難しくなっています。県民への周知が進めば進むほど、相談件数の増加や具体的な対応が必要となり、相談員の増員や専門性の向上、ノウハウの蓄積などが重要だと考えます。

 一方、合理的配慮の提供実現には、一定のコストが伴い、一つの壁となることも容易に想像できます。例えば、スロープの設置などバリアフリー化を進めるための費用一部補助、障害者 情報アクセシビリティ向上のための改善費用など事業者が障がい者への配慮を行う際の経済的負担を軽減し、より多くの場所で合理的配慮の提供が根付くことを期待します。

 以上を踏まえ、障害者差別解消法改正に伴う合理的配慮提供の義務化への対応について、福祉部長にお伺いします。

【福祉部長答弁】

 障害者差別解消法改正に伴う合理的配慮提供の義務化への対応についてお答えいたします。

 障害のある人は、日常生活や社会生活を営むうえで様々な制約を受けていることから、これらを取り除き、「障害のない人と同じように生活を送ることができる社会の実現」が求められています。

 このため、県では、障害者差別解消法の改正に先立ち、2014年3月に議員提案により制定された「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」により、「合理的配慮を提供しないこと」を差別として禁止したうえで、その解消に向け、広報啓発や相談対応に努めてまいりました。

 今般、改正法において、新たに、企業などの事業者に合理的配慮の提供が義務化されたことを踏まえ、改めて、広報誌やSNS、新聞広告等あらゆる広報媒体を用いて、事業者や障害のある人を含め、広く県民に向けて、法の趣旨や内容、合理的配慮の好事例などについて、積極的に周知を図ってまいります。

 また、障害のある人が適切な合理的配慮の提供を受けるためには、特に事業者に理解を深めてもらう取組が重要となります。このため、県が講師を派遣する研修会の開催を働きかけるとともに、研修内容についても、合理的配慮が問題となる場面を想定したロールプレイを取り入れるなど、より実践的なものとなるよう見直してまいります。

 次に、相談体制につきましては、県では、条例の施行に伴い「茨城県障害者差別相談室」を設置しており、開設以来、延べ約千件の相談に対応してきたところでございます。

 これまでの相談対応においては、障害のある人に代わって事業者を訪問し、合理的配慮の提供方法について調整し、課題の解決を図るなど、事業者と障害のある人の双方をつなぐ立場として、積極的に取り組んでまいりました。

 今後は、相談件数の増加はもとより、事業者が提供すべき合理的配慮の判断が難しいケースへの対応も想定されます。

 このため、法律や医療の専門家の参画をいただきながら事例検討の場を定期的に設けることなどにより、相談員の専門性の向上と事案解決に向けたノウハウの蓄積を図り、相談体制を充実してまいります。

 また、事業者が合理的配慮を提供する際、経済的な負担が生ずるケースも想定されます。

 改正法は、事業者に対し、経済的な負担も含めて、過重な負担にならない範囲での対応を求めておりますが、一方で、事業者が合理的配慮を的確に提供するためには、コミュニケーションツールの整備といった環境改善も重要となってまいります。このため、個別の相談対応において、必要に応じ、市町村の助成制度の紹介などを行ってまいります。

 県といたしましては、今後も、障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすことができる社会の実現に向けて、関係機関と連携し、しっかりと取り組んでまいります。

【村本しゅうじ議員要望】

 障害者差別解消法改正に伴う合理的配慮提供の義務化は、障がい者の権利保護と平等な社会の実現、障がい者の就労機会拡大を図るために必要不可欠です。これらの取り組みを通じて、誰もが分け隔てなく共生できる社会の実現に努めていただきたいと思います。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。

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