「困難を抱えている子どもをチーム学校でケアするいばらきスクリーニング会議の導入について」

令和6年 第二回定例会 一般質問

【村本しゅうじ議員質問】

 困難を抱えている子どもをチーム学校でケアするいばらきスクリーニング会議の導入についてお伺いします。

 乳幼児期は、市町村では、全員の子どもに3歳児健診などの乳幼児健康調査や、就学前健診など、保健師、医師、心理士など多職種によって、支援が必要と思われる子どもや家庭が拾い上げられ、対応されています。

 しかし、就学すると、全員の子どもの状況を把握する機会がなくなります。

 子どもたちが、学校で学び健やかに成長していくには、学習面だけでなく福祉面を含めた阻害する要因を把握し支援していくことが重要です。

 そのため、困難を抱えている子どもを多くの人の目で見守り、支援していく必要があると考えます。

 こうした、全ての児童生徒を対象として、問題の早期発見・未然防止のために、潜在的に支援の必要な児童生徒を関係者間で把握しようとする仕組みが「スクリーニング会議」です。

 大阪公立大学大学院 山野則子教授は、子どもの隠れたSOSに早期に気付き、迅速に子どもや家庭への適切な支援につなぐため、定期的な「スクリーニング会議」の実施を提唱しています。

 学校では、これまでも、学校生活の中で、子どもたちの様々な困難を把握するため、年度初めに児童生徒の状況を把握したり、指導が必要な児童生徒については関係者による個別協議を実施していると伺っています。

 そこで、これらの取組に、学期ごとのスクリーニング会議を加え、学校において、早期に全員の子ども達の状況を確認していくことで、福祉も含めた困難により正常な学校生活が送れていない子どもを洗い出し、小さい芽のうちに適切な対応を行っていく「いばらきスクリーニング会議」として実施することを提案いたします。

 令和2年にスクリーニング活用ガイドが文科省から公表されており、令和4年には改定された生徒指導提要にもスクリーニング会議が記載され、必要な支援体制を整備するための会議であると規定されています。

 こういったものを参考にし、いばらきスクリーニング会議では、スクールカウンセラーは勿論、他のクラスの担任や養護教諭、生徒指導、特別支援教育コーディネーター、スクールソーシャルワーカーなどが参画し、チームとして議論・方針決定を定期的に行うことで、取り残される子どもが減少し、教師の負担が軽減されることにもつながります。

 先ほどの大阪公立大学大学院の山野教授の研究によると、このスクリーニング会議の効果は、遅刻の改善が70%、友人関係改善が50%不登校が1/3になるなどの改善が見られたとの報告があります。

 また、教師側にも、担任以外の児童生徒について意見を言うことが倍増し、児童への対応を具体的に決定する態度が好調であった案件が約8倍と効果が顕著であった一方で、スクリーニング会議の導入によって教師の負担感が、増加するわけではないという結果でした。

 以上を踏まえ、困難を抱えている子どもをチーム学校でケアするいばらきスクリーニング会議の導入について教育長にお伺いします。

【教育庁答弁】

 困難を抱えている子どもをチーム学校でケアするいばらきスクリーニング会議の導入にについてお答えいたします。

 児童生徒にとって、学校が安心して学べる場所であるためには、教職員が一人一人の状況を把握し、適切に対応していくことが大切であると認識しており、学校では、不安や悩みを抱えている児童生徒の情報を、定期的・組織的に把握し共有することで、適切な対応ができるよう努めております。

 具体的には、年度始めや長期休業明けに全ての児童生徒の状況を確認し、配慮を要する児童生徒への対応について個別に検討を行い、全ての教職員でその内容の共通理解を図るだけでなく、週に1回生徒指導担当者が、困難を抱える児童生徒の対応を協議し、課題を全職員で共有することで、組織的に対応できる体制を整えております。

 その上でトラブルが発生した場合、管理職をはじめ、生徒指導担当者、担任、学年主任などの関係職員によるケース会議を緊急で開催し、積極的に外部人材を活用することで、対応策を検討しております。

 例えば、児童生徒の不安やトラブルが心理的なものであればスクールカウンセラーがその問題の解決に協力するほか、福祉面での課題がある場合は、社会福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーにつなぐことで、家庭環境や生活環境の改善を図るなど、児童生徒が抱える困難に対して、教員だけでなく専門家を交えた多くの視点で適切に対応しているところです。

 加えて、児童生徒の不安や悩みに早期に対応するため、毎月の定期的なアンケートや面談を行うとともに、昨年度から自分の心の状況を「晴、曇、雨」で表し、教職員が確認できるシステム「いばらき心の健康観察」を活用するなど、児童生徒一人一人の悩みや心の変化を把握できるよう努めております。

 議員ご提案のスクリーニング会議は、2021年から文部科学省と大阪公立大学が協力して実証研究を進めているものであり、潜在的なSOSを早期発見し、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーなどを交えたメンバーによる定期的なケース会議を行うことで、児童生徒の抱える問題の解消に効果があったとの報告があります。

 また、文部科学省においても、2022年に改訂した生徒指導提要の中で、身体面、心理面、対人関係面、学習面、進路面などの領域で気になる児童生徒を全てリスト化し、会議において共有することが効果的であることを示しています。

 こうしたことから、困難を抱える児童生徒をこれまで以上に支援していくためには、丁寧なスクリーニングによって網羅的に問題を早期発見することや対応の方向性を複数の関係者で見いだすことは重要であると考えております。

 今後は、各学校において実施している児童生徒の状況把握やケース会議などのスクリーニングの手法について改めて確認するとともに、引き続き、支援策が担任などの個人の判断によることがないよう、学校全体で組織的に取り組み、児童生徒の潜在的なSOSを把握するためのより効果的な方策について研究してまいります。

 県といたしましては、面談などを通して困難を抱えている子どもの課題をいち早くキャッチし、外部専門家を交えたチーム学校でケアする体制を構築することで、一人一人の支援を丁寧に行い、安心安全な学校づくりに努めてまいります。

【村本しゅうじ議員要望】

 大阪公立大学大学院 山野則子教授の調査によると、就学援助や児童扶養手当が問題なく取得できる経済状況の家庭であっても、14.6%の世帯が申請をしたことが無く、更に、児童相談所や福祉サービスの多くは、申請主義で、1か2%しかつながっていないとのことです。福祉的な支援を受けられず経済状況などが学校生活に影響を及ばさないように、多様性のある関係者に関わっていただけるような全員把握を学期ごとに行って、困難を抱える子どもの救いとなっていただきたいと思います。また、高校生にとってもこれは重要な取り組みだと思いますので、高校での実施もお願いします。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。

 #茨城県議会 #日立市