令和3年 第二回定例会 一般質問「子どもの心の声を聴く子どもアドボカシーの推進について」

【村本議員質問】

 子ども意見表明権とは、子供に影響を及ぼす全ての事柄について、自由に自己の意見を表明する権利の事です。しかし、弱い立場の子ども達が自分だけで権利を主張することは簡単ではありません。子どもに、自分に権利があることを伝え、その意見を聞き、受け止め、自分の意見を大人や社会に伝えたいと思う時に、どうすればよいかを一緒に考え、情報提供し、行動を支援する人をアドボケイトと呼び、英国やカナダでは独立アドボケイトが公的な制度となっています。そして、この意見表明権を保証するための取り組みが子どもアドボカシーであり、独立した組織が基本となります。

 我が国においても、保護をためらったために死亡した事例、保護してもらえなかったために自殺した事例などが報告されており、そのような事例をなくすために、国も対策へ向けた動きを加速しています。

 平成28年に児童福祉法が改正され、児童福祉審議会は、児童や家族等に対し、必要な報告等を求め、その意見を聴くことができる旨規定されました。令和元年の児童福祉法の改正では、改正法施行後2 年つまり本年度内を目途に、「児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるための措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」こととされました。

 この一連の流れで行われた平成31年公表の「子どもの権利擁護に新たに取り組む自治体にとって参考となるガイドラインに関する調査研究」の中で、都道府県等が子どもの意見形成支援や意見表明支援の仕組みを構築する際の参考とするための具体的な方策を記したガイドライン案が提示されました。また、本年3月子どもの意見表明を中心とした子どもの権利擁護に関する調査研究報告書が公表され、先行する自治体や関係者のインタビュー調査の結果による課題などが示されています。更に、「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」から5月に『とりまとめ』が示されたところです。

 そこでは、「悲惨な死亡事例等も後を絶たない中、子どもの最善の利益を社会全体で守っていくためには、個別ケース対応・政策立案の両面において子どもからの意見表明権を保障し、それをしっかりと受け止める権利擁護の仕組みを全国的に整備していくことが不可欠である」としております。

 一方で、前述の「子どもの意見表明を中心とした子どもの権利擁護に関する調査研究(令和3年3月三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」では、様々な課題が抽出されていますが、中でも関係機関における独立アドボカシーへの理解醸成をどのように図るのかやガイドラインの普及なども課題として挙げられています。その「総括」の中では、「関係機関の理解を得るのに時間を要し、アドボケイトが実際に子供に対面するまでに想定以上の時間がかかった。関係機関の十分な理解が独立アドボカシーの前提条件となることを再確認し、事業の一環として入念に実施すべきである」と提言しています。

 私も、報告書などを読みましたが、独立アドボカシーとは、子どもが自分の意見を伝えるための 電話やメール、施設の職員への伝達などの手段に加え、単にもうひとつの手段として独立アドボケイト制度を増やすだけのことですが、なかなか本人を含めた当事者や関係機関に理解していただくことの難しさがあることが分かりました。

 その導入についての令和元年度の都道府県等へのアンケート調査では、他県においても、2自治体が実施中、12自治体が検討中と回答するなど、子どもの権利擁護に係る実証モデル事業の実施などを通して取組が進みつつありますが、「日本一、子どもを産み育てやすい県」を目指す本県においてこそ、全国に先駆けて①先進事例等の調査・研究 ②準備室の立ち上げ ③こどもアドボカシーの研修の実施 ④一時保護所で試行してみる等の取り組みを進めていただきたいところであります。

 兎に角、習うより慣れろ!県民・関係者の理解の輪を広げ、そして、子どもアドボカシーが定着し、痛ましい事件・事故が無くなるよう迅速に最善の努力をしていただくことを切望いたします。

以上を踏まえ、来年4月までには国において必要な措置を講ずるとされている子どもの意見表明;アドボカシーを中心とした子どもの権利擁護の取り組みについて、具体的にどのように進めるのか、保健福祉部福祉担当部長にお伺いします。

【保健福祉部福祉担当部長回答】

 子どもの心の声を聴く子どもアドボカシーの推進についてお答えいたします。

 虐待等に伴う、子どもの児童養護施設への入所や一時保護などの社会的養護にあたりましては、子どもの最善の利益を優先して対応する必要があり、子どもの意見表明権を保障し、権利擁護を図る、いわゆる「子どもアドボカシー」の取り組みは大変重要であると認識しております。

 このため、本県におきましては、児童養護施設への入所や里親委託に際し、子ども本人の意見を聴く機会を重視しているところであり、具体的には、保障されている権利を子どもの視点から分かりやすく説明した「子どものための権利ノート」や「施設入所の手引き」を活用し、子どもが主体的に意見を述べられるよう、児童相談所の職員がサポートをしております。

 また、サポートする側の児童相談所や児童養護施設の職員、里親に対しましては、毎年度、「子どもの成長・発達や相談援助のあり方」などをテーマに実施する研修において、「子どもの権利擁護」に関する講義を加え、子どもが権利の主体として尊重されるよう意識醸成に努めております。

 さらに、施設入所や里親委託の後も、随時、児童相談所の職員が訪問し、日常生活や家族との交流の状況などについて、子どもから直接、聞き取りを行い、必要に応じて処遇の見直しを行うなど、より良い養育環境の提供に努めております。

 加えて、一時保護所において、子どもの権利擁護を図り、安全・安心な環境で適切なケアを提供していくためには、公正中立な立場から子どもへの処遇を評価することも重要となります。

 このため、国が児童への適切な処遇を確保するために作成した「一時保護された子どもの生活・支援に関する第三者評価の手引き」に基づき、本県においても、今年度から新たに、第三者評価を取り入れてまいりたいと考えております。

 この第三者評価の結果を、子どもへの処遇面での対応にフィードバックさせることにより、より良い養育環境を提供するとともに、子どもの最善の利益を優先した、養育と支援に努めてまいります。

 こうした中、厚生労働省が設置した「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」の検討結果がとりまとめられ、先月27日に公表されました。

 その中では、都道府県が施設入所や里親委託などの措置を採る場合においては、あらかじめ子どもの意見を十分に聴かなければならないことや、意見表明支援員の配置など、子どもの意見表明を支援する環境の整備に努めなければならないことなどを、法律に規定すべきことが提言されております。

 本県といたしましては、国のワーキングチームの検討結果を踏まえ、アドボカシーの観点から、「子どものための権利ノート」の記載内容の充実や第三者評価の調査項目への反映などに、先行して取り組んでまいります。

 さらに、子どもの意見表明権をしっかりと保障していくためには、意見表明支援員の活動が鍵となりますので、その育成方法や環境整備に向けて、モデル的に取り組む自治体なども参考としながら、児童福祉司や施設職員などの研修におけるカリキュラムの改定を図るなど、国の制度に速やかに対応できるよう、準備を進めてまいります。

 県といたしましては、引き続き、国の動向も注視しながら、子どもの意見を十分に尊重して、子どもにとって最善の利益を優先し、心身ともに健やかな成長が図られるよう、全力で取り組んでまいります。