令和4年 第三回定例会 一般質問「大人の発達障害の支援について 」

【村本しゅうじ議員質問】

 大人の発達障害の支援についてお伺いいたします。

 発達障害という障害が世に知られ始めて二十年ほどが経過しました。その間に、研究が進み、診断方法が進歩してきました。こうした中で、幼少期は発達障害に気づかず、大人になってから、様々な不適応が表面化して初めて発達障害であると診断され、社会からドロップアウトするケースも多くなってきました。

 大人の発達障害では、一人暮らしや就職における環境変化などで大人になってから生きづらさを感じて初めて認識される方が多いと聞いています。なお、診断基準を満たすほど特性が強くないことから、発達障害と診断されない「グレーゾーン」と呼ばれるケースもあります。このため、発達障害かグレーゾーンかに関わらず、「なぜ上手くいかないのか」など生きづらさの原因や対処方法が分からず、「そもそも発達障害のことがわかっていない」状態が多くみられることに、大人の発達障害特有の困難があります。

 現在の大人の発達障害支援は、生活訓練、就労移行支援が多くを占めております。法定雇用率の引上げもあって障害者の雇用数は年々増加しておりますが、職場への定着が課題となっております。これは、働く意欲や能力があるにも関わらず、企業や本人の理解不足によって生じている課題です。

 これを解消するため、自分の特性をよく理解して、できれば周囲にもわかってもらう「自分・支えられ方マニュアル」を作成することで、いくらか生きづらさを軽減する取り組みを行っている民間企業もあります。

 また、長野県にあるNPO法人では、発達障害支援として、大人でも参加できる生活訓練と就労移行支援を組み合わせた18歳以上の発達障害者が利用できる施設を設置して、利用者本人が自己理解を深めるための振り返りシートの運用やコミュニケーションアプリを活用して、利用者、近親者、施設運営者との間で近況を共有する支援を行っています。

 これらには、知らなかった自分を知り、可視化することで、自身のことを具体的に表現できるようになったり、自分の特性を家族、友人、同僚などの身近な存在に理解してもらえることで、関係性が良くなり、そして自分に合った就業ができるなどの効果が見込まれます。

 茨城県においても、大人の発達障害で苦しむ方のために、発達障害者の自己理解を深める支援ツールの導入を提案いたします。また、本人に加え、職場での理解が重要であることから、グレーゾーンを含む大人の発達障害の特性や支援内容の啓蒙活動を県として実施していただきたいと思います。

以上を踏まえ、県における大人の発達障害支援の取り組みについて、福祉部長にお伺いいたします。

【福祉部長答弁】

 大人の発達障害の支援についてお答えいたします。

 県では、県内2か所に設置した発達障害者支援センターにおいて、本人や家族からの相談対応をはじめ、障害傾向を見極める検査の実施や就労支援、発達障害に関する普及啓発活動など、総合的な支援を行っておりますが、今年度7月までの相談者数の半数以上が19歳以上の方であり、大人の発達障害が課題となっております。

 大人の発達障害の方には、就労支援が大きな役割を果たしますので、発達障害が疑われる方に対しては、発達障害者支援センターにおける相談、検査等を通じて、精神障害者保健福祉手帳の交付の対象になる場合には、障害者手帳の取得を促し、障害者枠での就労につなげております。

 併せて、県内の各企業・団体等に対しては、障害者の法定雇用率の達成に資するとともに、トライアル雇用助成金などの各種支援措置が受けられるメリットもあるため、発達障害者の雇用について積極的に働きかけをしております。

 なお、手帳を取得した方の中には、日常生活をおくる上で、支援が必要となる方もおりますので、県内9か所に設置された障害者就業・生活支援センターにおいて、職業準備訓練に加え、金銭管理や健康管理など、就業面と生活面の一体的な相談・支援を実施しております。

 一方、手帳の取得までには至らないものの、発達障害の特性により就労支援が必要な方については、自分自身で障害特性を理解することが、就労に向けての第一歩になります。

 このため、発達障害者支援センターでは、コミュニケーション面や、作業遂行面から、働く上での自分の特徴を客観的に 整理するツールとして、厚生労働省が、医学的知見や就労支援機関の意見を踏まえて作成した「就労パスポート」を活用し、ハローワーク等の就労支援機関と協力しながら支援を行っております。

 なお、議員からは、発達障害者の自己理解を深める支援ツールの導入についてご提案がありましたが、この「就労パスポート」を活用し、障害者手帳の取得に至らない方も含め、就職や職場定着につなげてまいります。

 また、発達障害者の就労や自立に向けては、本人の自己理解はもとより、周囲の方々や雇用する企業側の正しい理解が必要となりますので、県民向けセミナーや、企業向け講演会の開催を通じて、発達障害者が社会の中で配慮を受けやすい環境づくりを進めてまいります。

 県といたしましては、発達障害の方々が生きづらさを解消し、就労の希望や自立した生活が実現できるよう、支援の充実・強化に努めてまいります。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。 #茨城県議会 #日立市