「高病原性鳥インフルエンザ対策における分割管理の推進について」令和5年 第三回定例会 一般質問

5 高病原性鳥インフルエンザ対策における分割管理の推進について【農林水産部長】

【村本しゅうじ議員質問】

高病原性鳥インフルエンザ対策における分割管理の推進について伺います。

 高病原性鳥インフルエンザによる1シーズン当たりの殺処分数は、今シーズンは過去最

高の1771万羽となりました。

 ロシアのウクライナ侵略に関連した飼料高騰に加え、殺処分の影響により、鶏卵の供給が減少し、物価の優等生と言われた鶏卵が高騰し、我々県民の生活に大きな影響を及ぼしました。

 茨城県においても今シーズンは、6例の発生が確認されています。

 一旦、高病原性鳥インフルエンザの発症が確認されると家畜伝染病予防法に基づき同じ養鶏場内のすべての鶏を処分する必要があり、約430万羽の殺処分を実施し、農家の損害額は推定47億円を超えると伺っております。

 処分には、のべ31,860人の方々がその任に当たって下さっており、農家や協力団体、県職員の皆様には敬意を表すると同時に感謝申し上げます。

 このように直接的な被害金額だけではなく、処分の人件費や作業者の精神的な苦痛、養鶏場経営に及ぼす影響など、有形無形を問わずその損害は大きなものとなっております。

 本来であれば、感染のメカニズムを完全解明して対策すべきですが、現状明確になっておらず、考えうる対策を講じると同時に、殺処分の効率化などを実施していると承知しております。

 国においては、養鶏場を複数の管理区域に分割して別な農場として運営する分割管理を盛り込んだ家畜伝染病に基づく指針を見直すこととしており、先日公表されました。

 分割管理では、大規模農場を複数の農場に分け、作業する人員や車両、機材、卵の選別・包装施設などを別々に運用し、出入りをなくすことでウイルス拡散を防止し、万一発生した場合の殺処分は対象農場を限定でき、同時に処分する数を削減できる可能性が生まれ、負担軽減につながるものと期待されています。

 しかし、農家にとっては、分割で運用するための人員の確保や人件費の増大、更に、農場を分割運営するための設備更新費用が発生することから、全額自己負担では導入できる農場は無いのではないかと危惧しています。

 農水省は今年初めに都道府県に対して、分割管理の導入を積極的に検討するよう要請したと伺っておりますし、一旦発生してしまうと、行政としても殺処分費用や農家への補償が発生してしまうため、費用対効果を検証して分割管理設備改修の補助を国に働きかけるとともに、県独自の補助を検討していただきたいと思います。

 以上を踏まえ、高病原性鳥インフルエンザ対策における分割管理の推進について、県の方針を農林水産部長にお伺いします。

【農林水産部長答弁】

 高病原性鳥インフルエンザ対策における分割管理の推進についてお答えいたします。

 高病原性鳥インフルエンザにつきましては、昨年度、全国各地で発生が相次ぎ、本県におきましても、6農場で発生が確認されました。

 そのうち4農場は約100万羽規模の鶏を飼育する大規模農場となっており、防疫措置では、自衛隊をはじめ、多くの団体や市町村の方々にもご協力いただき、動員人数は県職員を含め延べ約3万人に上ったところです。

 本病が発生すると、家畜伝染病予防法に基づき、農場内において飼養している全ての鶏を殺処分する必要があり、養鶏農家の経営に及ぼす影響や、県や団体などの職員が防疫作業に従事することによる負担、さらには鶏卵の生産量が減少することで鶏卵価格が高騰し、消費者の家計への負担も増加するなど、様々な影響が生じることになります。

 このため、県としましては、特に50万羽以上を飼養する大規模事業者における対応を念頭に、先の定例会において「茨城県鳥インフルエンザの発生の予防及びまん延の防止に関する条例」を提案し、制定されたところであり、本条例に基づき、本病の発生予防とまん延防止対策の強化に努めているところです。

 こうした中、議員ご指摘のとおり、国においては、本病発生時の殺処分等の負担を軽減するため、あらかじめ農場を区域ごとに分割して管理する分割管理の導入に向けた検討が行われ、8月には分割管理の導入が認められるよう、家畜伝染病予防法に基づく指針が改正されたところです。

 分割管理とは具体的には、生産された卵を集め選別するGPセンターや、鶏糞を処理する堆肥舎などを、農場内の区域ごとにそれぞれ別々に整備し、さらには農場作業員の動線が他の区域と交差しないようにすることで、農場を実質的に分割し、万が一本病が発生した場合でも、分割された区域の範囲に限定して殺処分を行うことで、殺処分の羽数を減少させ、防疫措置の作業負担や農場の被害を抑えることができるなどの利点が考えられます。

 一方で、分割管理を導入する場合、通常は生産性の向上を考慮して、1か所に集約されていることが多いGPセンターなどについてそれぞれ別々に整備する必要があり、施設整備や改修への新たな投資や、農場作業員をさらに雇用する必要があるなど、生産コストが増大し、大規模農場においてはスケールメリットが活かせなくなるという側面もあり、導入に当たっては、事業者において様々な角度から検討が行われる必要があります。

 県といたしましては、養鶏事業者の分割管理の導入の検討に資するよう、まずは、分割管理の導入に係る施設整備費用等に対する支援措置の実施について国に対し要望を行うとともに、国が策定を検討している分割管理に関するマニュアルや、現在先行して分割管理の導入を進めている他県の農場の事例などを参考に、事業者に対し指導を行うことで、分割管理の導入を検討する事業者の取組を後押ししてまいります。

 県といたしましては、今後も、本県独自の条例に基づき、養鶏事業者への飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図るとともに、事業者における分割管理の導入の検討も含め、発生予防やまん延防止の取組を強化することで、本県養鶏業の振興に努めてまいります。

【村本しゅうじ議員質問要望】

 国の動向や他県の状況をよく見ていただき、迅速な対応をお願いいたします。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。 #茨城県議会 #日立市