令和4年 第一回定例会 予算特別委員会での質疑/「災害避難における妊産婦・乳幼児への配慮について」

  

(村本しゅうじ議員質問)

 次に、災害避難における妊産婦・乳幼児への配慮についてお伺いいたします。

 我が国における災害は、激甚化、頻発化、広域化の一途を辿っており、如何にして命を守るかを真剣に取り組んでいく必要があります。そして今、我々は複合災害や感染症対策など新たな課題にも直面しており、避難及び避難所における妊産婦や乳幼児の視点に立った対策も見直していく必要があります。

 妊産婦・乳幼児は、少数派であることや病気ではないため、配慮の必要性に関する関心が低く、通常時でも出産という相当な配慮が必要な状況にも関わらず、被災地の中で見過ごされがちになっている現状があります。

 神奈川県立保健福祉大学 吉田穂波教授の報告によると、東日本大震災のあった2011年の東北地方の1,000人当たりの乳幼児死亡率が約1.5%から2倍の約3.0%に激増しており、病院以外で亡くなった乳幼児が9割を占めました。明らかに、震災における避難生活の影響であると思われ、愕然としました。

 また、妊産婦・乳幼児で災害時に配慮が必要な人数は、容易に算出できます。例えば、私の住んでいる日立市では年に約900人が生まれ、1日当たりでは2.5人前後となります。ある1日を例にとっても、妊娠期間が280日ですので、先程の2.5人を掛けると、妊婦が約700人、産後6週間の産褥婦が約100人で、合計約800人居ることになります。さらに1歳未満の乳幼児は約900人で、妊産婦と乳幼児の数は約1,700人にも上り、1日2.5件前後の分娩もケアする必要があります。

 この方々は感染症や出血、産後鬱リスクに加え、頻回の授乳や必要な栄養分・水分が成人より多く必要となるなど特別な支援が必要となります。この数はオーバーな数ではなく、しかも日立市だけの数となります。このことからもこの問題の重大さがお分かりいただけると思います。

 通常時でも大変な出産や育児です。いつ来るかわからない災害に備えて、落ち着いて授乳でき、子供の泣き声が気にならない場所の確保や子連れで利用できる避難所、衛生的な環境が、すぐにでも整備が必要であると申し上げます。しかし、すぐにそうした避難所が確保できるわけではありません。まずは、環境が整っている福祉避難所を有効活用する必要があります。

そこで、妊産婦や乳幼児の現状をどのように捉え、福祉避難所をどのように確保していくのか、保健福祉部福祉担当部長にお伺いいたします。

(保健福祉部福祉担当部長答弁)

 お答えいたします。

 災害により、避難所等での生活を余儀なくされている被災者の方々につきましては、心身の健康管理に十分に配慮した支援を行う必要がありますが、妊産婦や母子は声を上げづらく、避難所を敬遠し、自宅や自家用車で過ごしているケースもあると伺っております。

 こうしたことから、国におきましては、災害時に避難所において、支援を行う際の参考となる情報共有マニュアルを作成しております。

 このマニュアルでは、平時の備えから、発災直後の妊産婦・母子の安否確認や要支援者の把握、さらには、中長期の避難所生活を視野に入れた体調管理など、妊産婦と母子に関して、配慮すべき事項などが例示されておりますので、県では市町村に対し、近年、頻発する災害発生時に重ねて通知するなど、マニュアルの周知を図っております。

 また、東日本大震災を受けた災害対策基本法の改正において、市町村長は、災害時に、避難した住民等を滞在させる指定避難所を定めることとされ、主として、高齢者や障害者、乳幼児等の要配慮者を受け入れる福祉避難所は、相談体制の整備や必要な居室を確保することなどが、要件とされております。

 県といたしましては、災害対策基本法の改正を受け、福祉避難所の確保から施設運営のガイドラインとなる「避難行動要支援者対策推進のための指針」を策定し、市町村に対し、福祉避難所の確保に向けた具体の手順や方策を示すことにより、避難所の確保を促進しているところであります。

 その結果、昨年12月時点で、法の規定に基づき指定を受けた福祉避難所は190、また、市町村独自に社会福祉施設等との協定に基づく施設が291と、県内には合計481施設が確保されております。

 しかしながら、妊産婦・乳幼児の受け入れに特化した福祉避難所を確保している市町村は非常に少なく、また、一般の避難所においては、授乳スペース等のプライベート空間に配慮しつつも、居住スペースまでの確保は困難なことから、本人の要望や症状に応じて、福祉避難所へ移送するなどの対応を想定している現状にあります。

 このため、今後は、さらなる福祉避難所の確保の促進を図るとともに、要配慮者の態様に応じたきめ細やかな受入体制の整備・充実について、市町村に働きかけることにより、妊産婦や乳幼児等の要配慮者が安心して避難できる環境づくりに努めてまいります。

(村本しゅうじ議員要望)

 未来の災害から子どもたちを守るために、そして、せっかく授かった命を一人も失わないように、是非前向きに対応をお願いいたします。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。

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