令和3年 第二回定例会 一般質問「災害時受援体制の確立による防災力の向上について」

【村本議員質問】

 近年の災害は、激甚化、頻発化、広域化の一途を辿っており、国も「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」として防災・減災対策を強化しています。

 しかし、ハード対策のみでの限界が指摘され、ソフト対策も併せた総合的な防災・減災対策が必要とされております。最近、地盤工学会関東支部が公表したGNS:『自然災害に対するリスク指標』などによる脆弱性の改善状況の見える化や各地域の強み・弱みの把握等といった防災力の客観視も大切ではないでしょうか。

 このGNSは、自然災害リスクを定量的に示した防災減災投資の意思決定者へ向けた指標でハード対策の項目のみならず、自主防災組織カバー率やハザードマップ公開率等のソフト対策の項目も加味し、重みを掛けて算出した指標であり、茨城県は、全国22位となっています。そして、現在、更に細かく各市町村の指標の算出を行ったとの報道があり、今後の発展が期待されます。

 また、ソフト面での対策にも様々なものがありますが、その中でも、東日本大震災や熊本大地震時に、応援側と受援側のミスマッチが問題となりました。

 私も、サラリーマン時代に多くの不具合対策を実施して来ましたが、逐次的に投入される応援部隊が機能するための段取りに大変苦労しました。ともすれば、受援側での体制が整っていないと、応援側は指示待ちの状態になり、折角の応援が効果を発揮できないという残念な結果になりかねません。

 そのため、国は、「地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン」を策定し、都道府県及び市町村に対して、応援・受援体制の整備を求めています。

 これまで、茨城県においては、非常にわかりやすい県独自の受援マニュアル作成の手引きを策定して、市町村支援を行ってきました。

 しかし、現実は厳しく、先日公表された消防庁のデータによると応援職員受入れに関する規定すら定めていない県内の市町村は、50%の22市町村に上るなど決して、十分と言える状況ではありません。

 いつ発生するかわからないのが、自然災害です。市町村の事業であることは理解しますが、県も自分事と捉え、各市町村がどこで躓いて作成が進んでいないか、また、作成していても内容が十分かなど丁寧にアンケートを実施して、市町村でのマニュアル作成に拍車をかけていただきたいと思います。

 また、マニュアルは作ることが目的ではなく、出発点であります。是非、実効性が上がるよう有効な訓練や第三者による点検も併せて実施してはいかがでしょうか。

そこで、各市町村における災害時受援体制の確立に向けた県の取り組みについて、防災危機管理部長にお伺いいたします。

【防災危機管理部長答弁】

 災害時受援体制の確立による防災力の向上についてお答えいたします。

 近年、全国各地で記録的な豪雨災害が相次いで発生しており、こうした大規模水害から県民の命を守るためには、河川改修などのハード対策に加え、住民が適切な避難を行うためのソフト対策の充実が大変重要であります。

 特に、発災時においては、市町村が行うべき災害対応業務が数多く発生し、市町村単独での処理が非常に困難になることから、これまでも、国、県等が一体となり職員派遣による支援を積極的に行ってきたところであります。

 本県では、令和元年東日本台風の際に、被害の大きな5市町に対し、県職員などで構成するいばらき災害対応支援チームや、国の対口支援制度を活用した全国からの応援職員を発災の3日後から派遣し、住家被害認定調査などの業務を支援したところであります。

 また、被災地の医療を支える災害派遣医療チーム「DMAT」や、被災地での人命救助等を行う「緊急消防援助隊」などの全国的な支援も積極的に活用してまいりました。

 一方、これらの応援職員の支援を最大限活用するためには、受援側の市町村の体制を整えておくことも重要であります。

 国では、平成28年熊本地震を契機に、「地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン」を平成29年3月に策定するなどの支援を行っており、県におきましても、「市町村向け受援マニュアル作成の手引き」を平成30年12月に作成し、市町村を対象とした災害対応勉強会や防災担当課長会議等の機会をとらえて、受援マニュアルを作成し、受援体制を構築するよう働きかけているところであります。

 しかしながら、市町村における受援マニュアルの作成は未だ十分に進んでいない状況でありますことから、更に取組を加速していく必要があると認識しております。

 このため、今年度は、台風シーズン前に受援マニュアル未作成市町村の担当者を集めた「受援マニュアル作成のためのワークショップ」を開催し、市町村からの問い合わせや相談に丁寧に対応しながら、全ての市町村でのマニュアル整備を目指してまいります。

 さらに、災害発生時の市町村支援の取組として、令和2年3月、県災害対策本部内に「応援班・受援班」を設置し、発災時に国の職員派遣制度に基づき他県職員を県内被災市町村に派遣できる体制を整備したところであり、今後、これらの組織が十分機能するよう、受援を想定した訓練なども市町村と連係して実施してまいりたいと考えております。

 県といたしましては、これらの取組を通じて、早期に全ての市町村で受援体制が構築され、今後起こりうる大規模災害時に適切に対応できるよう、引き続き支援体制の強化に取り組んでまいります。