令和5年 第一回定例会 予算特別委員会での質疑 「中小製造業の振興について」

3 中小製造業の振興について【産業戦略部長】

(1)中小製造業の振興

(村本しゅうじ委員質問)

 次に、中小製造業の振興についてお伺いいたします。

 私は、少子化対策、人口流出対策として、その根幹となるのが仕事の創出であると思っております。

 特に、県北沿岸地域においては、基幹産業である中小製造業の活性化が非常に有効であると考えており、そのためには、単なるデジタル化ではなく、デジタル技術をフル活用して企業の業態を変革していく、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していくことが、中小製造業の振興には必要だと感じております。

 また、私は、昨年の第3回定例会一般質問において「つくば地域のベンチャー企業と県北中小製造業とのマッチング」を提案させていただきましたが、既存の事業分野にとどまらず、新たな分野へ進出する企業に対し支援を充実させていくことも重要であると考えます。

 そこで、県北地域の振興に不可欠な中小製造業の振興に、今後どのように取り組んでいくのか、産業戦略部長にお伺いいたします。

(産業戦略部長答弁)

 お答えいたします。

 県北地域には、電気・機械産業などの分野において、高い技術力を有する多くのものづくり企業が集積しており、当地域の中小製造業の振興を図るためには、これらの固有の技術力を活かした取組を支援することが大変重要であると認識しております。

 このため、県では県北地域のものづくり企業が培ってきた技術力をもとに、宇宙や医療など、今後、成長が見込まれる新たな分野でのビジネスに進出できるよう、展示会への出展や大学などとの共同研究への支援、新製品開発に向けた技術支援などに取り組んでいるところでございます。

 その結果、超小型人工衛星のフレーム製作や、体に負担の少ない外科手術用の医療用器具の開発など、新たな取組が進んでおり、今後も、実用化・製品化に結び付けられるよう試作品開発の支援などを行いながら、企業の挑戦をしっかりと後押ししてまいります。

 また、中小製造業の振興には、デジタル技術を活用し、企業の競争力を強化していくことも重要であります。このため、県産業技術イノベーションセンターにおいては、模擬スマート工場を設置しまして、デジタル技術の体験機会を提供することにより、例えば、ロボットによる組立工程の自動化や、IoTを用いた生産管理システムの導入などが進んでおり、引き続き、企業のデジタル技術の活用を支援してまいります。

 併せて、県では、データの利活用により新たなビジネスを創出するデータサイエンティストの養成にも取り組んでおりまして、これまでに約50名を育成したところでございます。その結果、AIによる画像診断技術を活用し、商品の不具合を検出するシステムの開発実証に繋げた事例も出ておりますことから、企業の利益率の向上や高付加価値化につながるよう、今後も積極的に伴走支援をしてまいります。

 さらに、今年度から新たな取組として、ものづくり企業と、独創的なアイデアを持つベンチャー企業や、最先端技術を有する研究機関との交流会を、つくば市や日立市で開催したところであり、今後も、新たな連携による新製品の共同開発、受注の確保など、中小企業の新たなビジネスチャレンジをしっかりと後押ししてまいります。

 県といたしましては、今後もこうした取組を充実させることにより、県北地域における中小製造業の振興に全力で取り組んでまいります。

(2)ものづくり企業とベンチャー企業と研究者との交流会

(村本しゅうじ委員質問)

 「県北地域牽引産業・中核企業創出事業」については、開発品の製品化までもう少しの案件もあると伺っております。ぜひ、今後も事業を継続していただくとともに、支援内容の充実をお願いしたいと思います。 

 また、「ものづくり企業とベンチャー企業と研究者によるモノづくり交流会」については、つくば市のみならず、日立市においても、開催していただきありがとうございました。私も現場に同席させていただきましたが、数多くの企業・研究者が参加され、活況を呈した様は圧巻でありました。

 参加企業に、参加したことによる効果をお聞きしたところ、多様なご意見がありましたが、一様に参加して良かったと仰っていました。製品化につながるなど成果も見られており、本事業は是非とも継続して実施していただきたいと思っております。

 一方、実施方法については、これまでの内容を検証し、より成果の出やすい方法へと変えていく必要があるのではないかと考えております。例えば、ベンチャー企業には、依頼したい仕事をなるべく明確にした上で参加いただくことや、ものづくり企業においても、ある程度業種を絞って開催することなども有効だと考えます。

そこで、ものづくり企業とベンチャー企業と研究者との交流会について、今後どのように取り組んでいくのか、産業戦略部長にお伺いいたします。

(産業戦略部長答弁)

 お答えいたします。

 委員ご案内のとおり、県では、今年度から新たに、ものづくり企業とベンチャー企業、研究者との交流会をつくば市と日立市で開催した結果、延べ80社140名を超える参加があり、多くの参加企業から高い評価を頂いたところです。

 マッチングの具体的な動きといたしましては、AIを活用し、振動データからトンネルや橋梁などの劣化を把握する装置の開発ですとか、熱を電気に変換する装置に用いる部品の製造など、これまでに6件の試作・製品化に繋がったほか、14件が商談中となっており、新商品の開発や販路拡大に繋がる事例が出てきているところでございます。

 こうした新たな取引を加速させていくため、今後もこのような交流会を継続的に開催しますとともに、開催方法につきましても、例えば、医療機器や環境・エネルギーなどの分野別のテーマを設定しまして、参加企業の受発注ニーズをより明確にすることで、マッチングの精度を高め、商談を行いやすくするなど、より効果的な取組となるよう創意工夫を重ねてまいります。

 また、今後は、交流会の後におきましても、専門家などを活用したフォローアップを行うことなどにより、更なる新製品や新技術の開発、受注の確保に着実につなげてまいりたいと考えております。

 県といたしましては、こうした取り組みを積み重ねることにより、ものづくり企業の新製品開発や販路開拓のみならず、ものづくり企業とベンチャー企業との協業による新たなチャレンジをしっかりと後押ししてまいりたいと考えております。 

(村本しゅうじ委員要望)

 常磐大学の菅田浩一郎教授の著書『中小企業の国際化と自立化』によると、日立地区の中小製造業49社を対象に実施したアンケートを分析した結果、企業城下町の日立市の中小製造業は、長年の護送船団からの脱却を余儀なくされ、それに成功した企業の自立化と国際化は相関があると述べております。国内マーケットが縮小する中で、海外へ打って出る必要性が増しており、DX推進やマッチング等の支援に加え、中小製造業のブランド化の手伝いや海外進出に対する支援もお願いしたいと思います。

 また、少し細かい話になりますが、企業の概要や取組を紹介する媒体として、独立行政法人中小企業基盤整備機構のホームページには、英語版で多くの県内企業が紹介されております。いばらき中小企業グローバル推進機構でも、例えば、英語表記のみでは無く、インドなどの新興国を意識した多言語表記に対応したホームページとすることも必要だと考えますので、検討していただきたいと思います。

(まとめ;質問最後のまとめを編集で追加しています)

 そして、中小製造業の振興ですが、そもそも、日立地区の中小製造業と言っても、機械、電気、化学に始まり、そして、機械と言っても、切削、研削、製缶、板金、精密加工等等、様々な業態があります。

 また、企業城下町であったため、自分たちの強みが分かっていない傾向があり、内外共に、上手に売り出すことができないでいます。そこで、各業態毎の実態を把握していただいて、一緒に強みを引き出して、打って出る切っ掛けを作って戴けたらと思います。例えば、強みを引き出すことに特化したセミナーやマッチング会の開催もあって良いのではないかと思います。

 そして、真のデジタルトランスフォーメーションの推進です。これは、業務のデジタル化を指すものではなく、デジタルの力で会社をトランスフォームするものです。先ほども、申し上げましたが、従来の社会モデルが通用しない時代になっており、縮小しゆく国内マーケットだけで闘っていくことは、もはや無理な時代です。

 まだ、日本の、県北の中小製造業が海外新興国の製造業より勝っているうちに、業務のデジタル化と同時に、海外の製造業が真似できない独自のビジネス展開を行う必要があります。

 経産省も、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」として、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取組を推進しています。

 是非、茨城県から、DXやSXを通じて、革新的な中小製造業の育成推進をお願い致します。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。 #茨城県議会 #日立市