令和5年 第二回定例会 予算特別委員会での質疑 「公立小中学校におけるいじめの傍観者に焦点を当てた取組について」

(1)いじめ防止策の取組

【村本しゅうじ議員質問】

 次に、公立小中学校におけるいじめの傍観者に焦点を当てた取組についてお伺いします。

 まず、いじめ防止策の取り組みについてお伺いします。

 学校におけるいじめは、減少の兆しは未だ見えず、いじめが原因とみられる子供の自殺も後を絶たない中、その根絶は我々大人の責務であるといえます。

 統計では、令和3年度の茨城県におけるいじめの認知件数は22,874件、重大事態数は19件となっています。いじめの認知件数増加は、早期発見による成果と考えれば単純に悪い状況だとは言えませんが、重要なのは、いじめを発生させない、発生しても深刻な事態にならないように国も県も全力を尽くすことであると考えます。

 本年4月には、子ども家庭庁が発足し、「こどもまんなか」社会の実現に向けた取り組みを行っております。

 そこで、学校におけるいじめ防止策として、具体的にどのような取り組みが行われているのかそしてその効果をどのように評価しているのか教育長にお伺いします。

【教育長答弁】

 お答えいたします。

 いじめは、児童生徒の人権を著しく侵害し、心身に重大な危険を生じさせるおそれがあることから、その根絶に向け、断固として取り組む必要があると認識しております。

 特に、いじめ問題への対応で基本となるのは、未然防止でございます。

  

(学校の取組)

 このため、各学校では児童生徒がよりよい人間関係を形成し、いじめが起きにくい環境が醸成できるよう、特別の教科「道徳」においていじめの問題を取り上げ、子供たちに考えさせる授業を実施しております。具体的な内容として、小学校6年生では、友人から仲間外れにされた人物やその周りで見ていた傍観者の役割を演じたり、自分の考えを発表させたりすることを通して、相手の立場を思いやる心を実践的に育んでおります。

 また、スクールカウンセラーによる授業プログラムにおいて、児童生徒の人間関係づくりや、助けてほしい時のSOSの出し方などのロールプレイングを通して、いじめはしてはいけないこと、いじめられたり、いじめを見た場合は周りに相談したりすることが重要であることを実践的に学んでおります。

 そのほか、いじめの解決に向けては、早期発見、早期対応が重要でありますので、学校生活に関する定期的なアンケートや教員による面談のほか、学校外の相談窓口として、電話で

 24時間相談できる「子どもホットライン」を設置するなど、児童生徒に寄り添った対応を行っているところです。

さらに、子どもたちに身近なSNSを活用し、気軽に相談できる「いばらきSNS相談」や、希望する教職員に不安や悩みを、一人一台端末を利用して相談できる「校内オンライン相談窓口」を、今年度から小学校にも拡大するなど、相談体制の一層の強化を図っております。

(取組の成果)

 こうした取組の結果、2021年度内での本県のいじめの解消率は約85%と、全国平均の約80%に対して高い状況にありますことから、一定の成果が上がっているものと考えております。

(2)いじめの傍観者に焦点を当てた取組

【村本しゅうじ議員質問】

 次に、いじめ傍観者に焦点を当てた取組についてお伺いします。

 様々な取り組みが行われていることは、認識できました。

 いじめの認知や発見の精度を上げて、正しい現状認識を行うことも重要ですが、そもそもいじめをなくす方が、根源的な対策といえます。

 先ほどの取り組みの中では、いじめを無くすことに直接寄与している対策は、あまりないように思えます。そういった意味では、子どもたちにいじめは絶対に行ってはいけないことを教えていくことが、最も直接的対応であると思います。

 教育の現場においては、これまでも一生懸命取り組んでこられたと思いますが、いじめがなくならない現状を鑑みて、PDCAのサイクルにおいて見直す必要があると思います。

 いじめには、当事者である被害者と加害者以外に傍観者となっている多くの子どもがいます。フィンランドのトゥルク大学の研究によると当事者たちだけでは、いじめは成立しにくく、傍観者への自分の力の誇示のために、繰り返しいじめをするケースが多く、いじめていなくとも、「傍観者」の存在自身が、いじめの助長を促しているというものです。

 この知見を活かし、フィンランド教育文化省が国立トゥルク大学に委託して小中学校向けに開発したいじめの本質を学び対処方法を経験させるいじめ対策プログラム─KiVa(キヴァ)の活用を検討してはいかがでしょうか。

 KiVaは、傍観者をなくすことが、いじめ防止の要と位置づけており、授業でも、いじめに遭遇した時の対応の仕方を学ぶロールプレイングなどによって、いじめられている子に声を掛けることや味方になることの大切さを学びます。

 導入した学校では、いじめの減少、児童生徒の不安・抑うつの低下、対人関係の改善などの効果が確認されており、欧州や米国での導入例もあるそうです。

 県においても、いじめの未然防止について、様々な取組を行っていることは承知しておりますが、加えて、傍観者に、より焦点を当てた取組を進めていただきたいと考えております。

  そこで、公立小中学校におけるいじめの傍観者に焦点を当てた取組について、教育長の所見を伺います。

【教育長答弁】

 お答えいたします。

 いじめは、いじめる側といじめられる側という二者関係だけで生じるものではなく、「観衆」としてはやし立てたり面白がったりする存在や、周辺で暗黙の了解を与える「傍観者」の存在によって成り立ちます。いじめを防ぐには、「傍観者」の中から勇気をふるっていじめを抑止する「仲裁者」や、いじめを告発する「相談者」の存在が重要となります。

 県では、児童生徒が、傍観者とならず、いじめをやめさせるための行動をとることの重要性を示した、国の「いじめ防止等のための基本的な方針」を踏まえ、毎年、各市町村の指導主事や、全ての小中学校の生徒指導主事を対象とした研修会で、いじめ根絶に向けた指導を徹底しており、各学校においては、いじめの傍観者にならないような様々な取組が展開されているところでございます。

 具体的には、児童会・生徒会が中心となり「いじめ防止フォーラム」を開催し、児童生徒がいじめの加害者、被害者、傍観者の立場から意見交換を行うパネルディスカッションを通して、いじめられている者の心情を理解し、いじめは絶対にしてはならない、といった意識の醸成を図るとともに、解決に向けた手立てについて提案するなど、いじめの根絶に向けて学校全体で取り組んでいる事例がございます。

 また、いじめを根絶させるための自主組織を児童生徒の有志で結成し、学校独自の人権宣言を作成することや有志による校内パトロール、巡回相談を通して、児童生徒同士が悩みを共有するなど、児童生徒が傍観者とならず、いじめの被害者に寄り添った取組を行っている学校もございます。

 なお、委員ご紹介の「いじめ対策プログラム-KiVa(キヴァ)」は、いじめの傍観者に焦点を当て、児童生徒の話し合いやグループ活動のほか、コンピュータの活用を通して、いじめに関する知識やいじめに向き合う適切なスキルを学ぶことができるプログラムであり、こうした学校の取組と目的などは共通しているものと認識しております。

 県といたしましては、傍観者にならないための取組の優良事例や、「いじめ対策プログラム-KiVa(キヴァ)」の取組の良さを、県内小中学校の研修会で情報提供するなど、いじめのない学校づくりを実現してまいります。

【村本しゅうじ議員要望】

 いじめは、絶対的に加害者に責任があります。一方で、何も行動しないことで加担したことになる傍観者がいます。そして被害者。社会の縮図かもしれませんが、我々大人の責任でいじめの無い社会を目指していきたいと思います。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。 #茨城県議会 #日立市