「核融合産業を活用した県内中小製造業の振興について」令和5年 第三回定例会 一般質問

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構より画像提供

2 核融合産業を活用した県内中小製造業の振興について【知事】

【村本しゅうじ議員質問】

 核融合産業を活用した県内中小製造業の振興について伺います。

 核融合発電は、長らく夢のエネルギーとして開発が進められ、我が国においても1950年代から着手しています。

 近年、世界においては日本も含めた世界7極が協力して開発している核融合実験炉ITERの建設も進んでいます。そして、米国でも核融合振興に6500億円もの投資資金が流入しているとの報道もあります。

 一方、我が国においても、カーボンニュートラルの鍵として、エネルギー安全保障の一環として、その実現に向けて、今年4月に政府の統合イノベーション戦略推進会議が、核融合エネルギーを新たな産業と捉え、その実用化に向け加速化を図る方針を決定しています。

 この会議では、核融合エネルギーの産業化には、我が国の民間企業の更なる参画を促進し、産学官が連携して取り組む必要があるとされ、核融合は有望産業になり得ると期待されています。また、実用化に向けた多くの産業の高度化や新市場の創出に伴い、巨大産業になる可能性が高いと言われており、国内では大企業だけでなく、中小企業やベンチャーも数多く参入しています。その中心が、那珂市にある量子科学技術研究開発機構QSTであります。

 QSTでは、先日お伺いした折に、ITERのみならず、世界最大の超電導トカマク装置であるJT-60SAの改修を行い、組み立てが完了し、本年秋にファーストプラズマの予定であると伺いました。

 しかし、核融合技術は、超高温であることなどから課題も多く、その技術を支えるものづくり力が必要とされており、QSTにおいても、地元の製造業の協力に対する期待が大きいと伺っております。

 QSTが県内に立地する地の利を活かし、県内企業特に県北の中小製造業が核融合産業に参入することが、県の更なる発展に繋がると、確信しています。

 そのため、ものづくり力に優れた県内企業と核融合とを結びつける施策を他都道府県に先駆けて一刻も早く行うことが重要と考えます。

 こうした状況を踏まえ、核融合を茨城県における新しい産業と捉え、着実に県内、特に県北の中小製造業の中核産業として発展させるべきであると考えますが、知事の所見をお伺いいたします。

【大井川知事答弁】

 核融合産業を活用した県内中小製造業の振興についてお答えいたします。

 核融合エネルギーは、環境問題とエネルギー問題を同時に解決する次世代のエネルギーとして期待されており、実用化に向け世界的に民間投資が増加するなど、新たな産業として注目が集まっております。

 こうした中、本県には、量子科学技術研究開発機構、略称QSTが立地し、核融合研究を長年推進してきた強みがありますことから、私は、このQSTの技術的優位性を新たなビジネス創出に繋げ、本県産業の競争力の強化を図ることが重要であると考えております。

 また、QSTにおいては、核融合研究の進展に伴い、今後実験機器を整備する予定と聞いており、県内企業、特に技術力のある県北の製造業が世界レベルの核融合産業に参入する大きなチャンスと捉えております。

 このチャンスを活かすためには、QSTと共に核融合研究に関わってきた県内企業の、より一層の参画に加え、これまで関わってこなかった意欲ある企業を新たに巻きこんでいくことが必要であると認識しております。

 このため、県内企業が保有する技術シーズとQSTの研究ニーズを結び付けることが重要と考え、県では「いばらき量子線利活用協議会」による核融合産業への参入支援を一昨年から開始いたしました。

 具体的には、まず、QSTと会員企業とのビジネスマッチングを開催し、両者を引き合わせることで県内企業の核融合産業への参入を後押ししているところであります。

 ビジネスマッチングには、これまで延べ

 30社に参加いただき、研究機器の開発など受注機会の確保に繋がる事例が県北の製造業5社をはじめ7件出てきております。

 また、ビジネス機会を拡大するため、QSTの発注情報を会員企業に提供しており、これまでに核融合実験機器の製造など約50億円の受注に繋がっております。

 さらに、QSTからの要望に速やかに応えるため、協議会の2名のコーディネーターが、研究者の必要とする技術を持つ会員企業を紹介する取組も新たに開始いたしました。

 一方、国におきましては、本年4月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定し、核融合エネルギーの産業化をビジョンとして掲げております。

 今後、戦略に基づき「(仮称)核融合産業協議会」の設立などが予定されていることから、これらの動きとの連携も視野に入れつつ、さらなる機運醸成を図ってまいります。

 県といたしましては、こうした取組により、核融合産業への参入を後押しすることで、県内中小製造業の振興にしっかりと取り組んでまいります。

【再質問】

 核融合ビジネスの中核産業化について知事に再質問いたします。

 核融合ビジネス参入を確実なものとするための県の体制構築が必要であると思います。

 茨城県においても、「いばらき量子線利活用協議会」を拡充して、QSTと県内企業との交流会を開催するなど、県内企業への核融合ビジネス参入を促しており、先日7月に行われました第2回技術交流会に、私も参加させていただきましたが、①核融合事業の県内産業としての全体像が企業側から見えづらい②高度な研究開発品であることから具体的な要求事項がわかりづらい、といった感想を持ちました。

 現在、県では、ひたちなかテクノセンターに委託して、2名のコーディネーターを配置するなど県内企業の核融合ビジネス参入促進に汗をかいていただいており、大変に感謝しておりますが、更に、コーディネーターを増強および組織化する、また窓口をQST内に設け身近な相談体制を構築するなどを実施することも早急に必要ではないかと考えます。

 そこで、核融合ビジネス参入を確実なものとするための県の体制構築の必要性について、知事にお伺いします。

【大井川知事答弁】

再質問にお答えいたします。

 QSTにおきましては、国の戦略に基づき、保有する核融合技術を民間企業へ移転するため、先月末に総合窓口を設立して、技術コーディネーターを配置していただいております。

 県といたしましても、2名のコーディネーターを配置しており、成果が創出されつつあるほか、県内企業やQSTからも高い評価をいただいておりますので、まずはその体制でもうしばらく進めてみて、必要であれば体制の強化・増強をQSTとも話し合いながら検討していきたいと考えております。

【村本しゅうじ議員質問要望

 核融合ビジネスは、県北のものづくり力を活用した県北振興策の核となるものだと思います。県北ものづくり企業 産学連携等研究開発補助金などの政策とのシナジー効果を発揮していただきたいと思います。

※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。 #茨城県議会 #日立市