「環境保全型農業の推進について」令和5年 第三回定例会 予算特別委員会
6 環境保全型農業の推進について
(1)普及指導体制整備の必要性
【村本しゅうじ議員質問】
環境保全型農業の推進についてお伺いいたします。
まず、環境保全型農業の推進に係る普及指導体制整備の必要性について伺います。
我が国の食料・農林水産業は、大規模自然災害・地球温暖化、生産者の減少等の生産基盤の脆弱化などの課題に直面しております。また、環境を重視する国内外の動きが加速していくと見込まれる中、国では、持続的な食料システムの構築に向けて、2050年までに化学農薬の使用量を半減することや、化学肥料の使用量を3割削減すること等についての数値目標を盛り込んだ「みどりの食料システム戦略」を令和3年に策定し、現在、環境保全型農業の取組が求められております。
環境保全型農業には、有機農業、カバークロップ、堆肥活用のほかにも様々な取り組みがあり、これらを通して、従来よりも化学農薬や化学肥料の使用量を低減することで生産コストの低減が図られることに加え、生産物の付加価値向上が見込める等、収益性の向上にもつながるものと考えます。
しかし、環境保全型農業は、化学農薬や化学肥料を低減するため、これまでとは異なる技術を取り入れる場合もあることから、その推進にあたっては、専門的な知識をもった指導員による現場の指導体制を整備する必要があります。
そこで、環境保全型農業の推進にあたり普及指導体制をどのように整備するのか、農林水産部長にお伺いいたします。
【農林水産部長答弁】
お答えいたします。
委員ご案内のとおり、環境保全型農業は、化学農薬や化学肥料の使用による環境に対する負荷を低減させることが可能であることから、本県農業を持続的に発展させる上で大変重要な取組であると認識しております。
一方で、化学農薬や化学肥料の使用量を低減するためには、例えば、代わりに使用する堆肥などの有機質資材に含まれる肥料成分が、資材によって異なることから、作物が必要とする肥料成分を適切に供給できる投入量を見極める必要があるなど、一般栽培とは異なる栽培管理を行う必要があります。
このため、県では、生産現場で技術指導を担う普及指導員などを対象として、化学農薬に頼らない総合的な病害虫の防除体系や、堆肥の投入量の設定方法などに関して研修を行い、実践的な指導力を強化しているところです。
また、環境負荷を可能な限り低減する有機農業については、差別化された農産品として販売することで収益性の向上も期待できる反面、一般栽培との栽培方法の違いがより大きく、栽培技術もまだ十分に体系化されていないという課題もあります。
このため、普及指導員などを対象として、一般栽培とは異なる有機栽培の実践技術や、有機農産物として表示・販売するために必要となる「有機JAS認証」の取得を指導・助言できる人材の育成を進めているところであり、育成後には、有機農業指導員として県内全域に配置していく考えです。
県といたしましては、こうした取組により有機農業をはじめとする環境保全型農業の推進に向けた普及指導体制の強化を図ってまいります。
(2)農家への支援策
【村本しゅうじ議員質問】
次に、環境保全型農業の推進に係る農家への支援策について伺います。
環境保全型農業の推進のためには、化学農薬や化学肥料を使用しない有機農業のほか、化学農薬に依存しない減農薬栽培や有機質肥料を活用した減化学肥料栽培といった取組に対する支援も必要不可欠です。
また、環境保全型農業に取り組むにあたっては、新たに導入する技術に対応した施設や機械、資材等が必要になる場合もあることから、その取組を増やすためには、技術的な指導体制の整備に加えて、例えば化学肥料の代替として有効な堆肥の活用等に対する農家への支援も必要と考えます。
そこで、環境保全型農業を推進するための農家への支援策について、農林水産部長にお伺いいたします。
【農林水産部長答弁】
お答えいたします。
委員ご指摘のとおり、減農薬栽培や減化学肥料栽培といった取組は、環境負荷低減に寄与するものでもあり、また、今般の国際情勢の変化により化学肥料の原料価格が高止まりする中、生産コストの低減にもつながり、持続的に農業を営む上でも大変重要な取組であると認識しております。
このため県では、化学肥料の使用量を低減する生産方式への転換を推進する観点から、昨年9月の補正予算において「資源循環型 農業構造転換 緊急対策事業」を措置し、たい肥等の活用を図るための施設や機械などの導入を支援しているところです。
具体的には、化学肥料に依存する従来の生産方式から、家畜ふんなどの産業副産物を活用する生産方式への転換を図るため、堆肥の散布機や堆肥を粒状に加工して散布しやすくするペレットの成型機械の導入などを支援し、環境保全型農業に取り組む生産者を後押ししているところです。
その結果、米の栽培を行う経営体において堆肥の散布機を導入し、新たに20haの農地で堆肥の活用に取り組むことで、化学肥料の使用量を半減するなど、化学肥料に過度に依存しないモデルケースも出てきており、今後はこうした取組の横展開を推進してまいります。
県といたしましては、資源循環型農業への構造転換を通して、「儲かる農業」の実践と、環境保全型農業の推進を図ることにより、本県農業の持続的な発展に取り組んでまいります。
※本内容は、原稿や動画を基に作成しております。正式には、議会の議事録を参照ください。 #茨城県議会 #日立市