令和2年第2回定例会 一般質問「特別支援教育における切れ目ない支援体制の構築について」
4 特別支援教育における切れ目ない支援体制の構築について
【質問】
特別支援教育における切れ目ない支援体制の構築についてお伺いします。
平成26年の障害者権利条約の批准や平成28年の障害者差別解消法の施行等も踏まえ,学校卒業後まで含め,障害者が社会で自立して生きるために必要となる力を維持・開発・伸長し,共生社会の実現に向けた取組を推進することが急務となっています。
こういった観点から,特別支援教育の切れ目ない支援体制の確立が求められており,「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」が運用されています。
「個別の教育支援計画」とは,教育,医療,保健,福祉,労働等の関係機関が連携協力して支援するためのツールとなるものであり,「個別の指導計画」とは,指導目標や指導内容・方法等を具体的に表した指導計画です。
茨城県においては,特別支援学校における「個別の教育支援計画」の作成率は,100%と非常に頼もしい状況であり,今後も維持継続をしていただきたいと思います。実質的な作成者は学級担任等が中心ですが,個人に任せるのではなく保護者や関係機関との連携協力により,校内委員会や支援会議で検討し,特に保護者とは,作成・実施・評価の場面それぞれで常に共通理解を図っていくことが重要です。
私が相談を受けた保護者のお話では,学校や関係機関の関係者間で思うような引継ぎがなされていない課題もあるようです。また,卒業後には,その評価を実施して運用改善の為に役立てほしいとのご意見も伺ったことがあります。
こういった声を集め,それを現場にフィードバックすることで,さらに血の通った内容とすべきと考えます。
また,切れ目ない支援体制構築の実現の為に,地域の医療,保健,福祉,労働などの関係機関との連携の場の設置,特に子供達が日常利用している放課後デイケアや日中一時支援などの支援事業所の職員の方と特別支援学校の教諭が相互訪問を行い,理解を深め互いの状況を想像できる環境づくりを行うべきと考えます。さらに,大変な思いをされている保護者への支援として,総合的な相談を実施するための「相談・支援窓口」の設置のほか,保護者の方々が悩みの共有や情報交換が気軽に実施できる「会話の場」の設置なども併せて実施すべきと考えます。
更に,就労の促進については,就労支援コーディネーターが県内3拠点校に配置され,職場開拓に汗を流していただいており,卒業後の就職率は,29.3%となっております。一方で,世間で注目されている農福連携や昨今のコロナによるテレワーク促進により,障害者にとって働きやすい環境の整備が進みつつあります。この機を迅速に捉えて,働きたい人が全員働けるような環境の構築をお願いしたいと思います。
そして,小学校・中学校の特別支援学級に通う児童・生徒が増加している現状において,教える側の専門性が重要となっており,特別支援学級を担当する教諭も特別支援教諭免許の取得を義務化するなど,指導の充実や合理的配慮の提供促進を図っていただきたいと思います。
以上を踏まえ,特別支援教育における切れ目ない支援体制の構築について,教育長にお伺いいたします。
【答弁】
特別支援教育における切れ目ない支援体制の構築についてお答えいたします。
障害のある子供たちの自立と社会参加を促進し,共生社会を実現するためには,学校と保護者や,医療・福祉などの関係機関が連携し,切れ目のない支援体制を構築することが重要であります。
このため,個別の「教育支援計画」や「指導計画」を作成し実行する際には,学級担任だけに任せることなく,保護者や関係機関による支援会議を活用して共通理解を図るとともに,卒業後は学校や家庭の様子を関係機関にしっかりと引き継ぐなど,情報共有を強化してまいります。
また,放課後等デイサービス事業所は,特別支援学校に在籍する児童生徒の約6割が利用しており,日々の連携が特に必要であります。
このため,年度当初に各学校において情報交換の場を設定するとともに,事業所の職員に授業を参観していただいているほか,毎日の送迎時に児童生徒のその日の様子を引き継ぐなど,情報の共有に努めております。
一方で,個別の教育支援計画の内容については情報共有が不十分なところがありますので,今後は,児童生徒の支援内容や支援上の課題,将来の目標などについて,保護者の理解を得たうえで,しっかりと事業所に引き継ぎ,継続的に組織的な情報共有を図ることができますよう各学校に徹底してまいります。
また,保護者からの相談については,福祉サービスについても,教員が一定の知識を身に付けた上で適切に対応できるよう,福祉について学ぶ機会を充実させるとともに,相談に当たっては,各市町村の福祉部局や社会福祉協議会と連携して対応してまいります。
なお,保護者同士の悩みの共有や情報交換の場については,PTAが主催する懇談会が定期的に開催されておりますので,その場で教員が相談に応じるなど,学校としても積極的に連携するとともに,保護者の思いを,子供たちの指導や学校の環境整備など,日々の教育に生かしてまいります。
また,就労の促進につきましては,多くの企業や福祉施設等の協力により職場見学や現場実習,農業体験などを実施しているところでありますので,引き続き,一人でも多くの生徒が社会参加できるよう,新たな実習先の開拓を進めてまいります。
なお,特別支援学校においては,企業と学校とをオンラインで結んだ校内実習が,一部の学校で行われております。こうしたICTを活用した先進的な取組は,移動や健康管理等の制約がある子供たちの働く機会の拡充にもつながりますことから,全ての学校に広がるよう,進路指導担当教員を対象に,ICTを活用した体験型実践研修を実施してまいります。
また,小中学校の特別支援学級を担任する教諭については,専門性の向上が重要でありますので,免許取得に係る講習会を受講し,特別支援学校教諭の免許を取得するよう,市町村に働きかけてまいります。 県といたしましては,こうした取組により,特別支援教育における切れ目のない支援体制を構築してまいります。