令和2年第2回定例会 一般質問「災害時の避難対策について」 (1)

地区防災計画とは

(1) 避難確保計画の整備促進と地区防災計画の作成推進等の防災力向上

【質問】

 避難確保計画の整備促進と地区防災計画の作成推進等の防災力向上についてお伺いします。

 平成28年8月の岩手県小本川の氾濫による高齢者利用施設の被害等を契機として法改正が行われ,老人ホームなどの社会福祉施設や学校,医療施設などの浸水想定区域内及び土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設の管理者には,避難確保計画の作成と避難訓練の実施が義務づけられました。

 水害や土砂災害は,毎年発生してもおかしくない環境となっており,要配慮者の確実な避難の実現に向け,一日でも早い避難確保計画の整備が必要です。

 また,国は,「水防災意識社会の再構築に向けた緊急行動計画」の中で,この整備を令和3年度までに完了させ,避難訓練を実施するとの目標を掲げておりますが,本県では,平成30年度末時点で,798の対象施設のうち,避難確保計画を作成している施設数は253施設と,その作成率は約32%となっており早急なる対応が必要と考えます。

 市町村を経由して,各対象施設へ丁寧な作成の依頼と作成目標の明確化などの見える化を図り,避難確保計画の整備促進をお願い致します。

 他方,地域住民が自発的に防災計画を作成する活動を応援するため,災害対策基本法が改正され,市町村地域防災計画に地区防災計画を定めるよう,市町村防災会議に提案できる「地区防災計画制度」が始まりました。

 茨城県では,策定済みが4市町41地区,策定に向け活動しているところが,5市町16地区と決して多いとは言えない状況です。

 国でもこの活動を加速するために,暗黙知となっている計画策定プロセスの共有化を図る自治体職員のネットワークである「地区防’z」を旗揚げし,地区防災計画の作成を推進しております。本県でも「いばらき地区防’z」を立ち上げ,地区防災計画の浸透を図ることも検討してはいかがでしょうか。

 これ以外にも,防災リーダーの活躍の場の増加,昨今の新型コロナウイルス感染症との複合災害の対応について地域防災計画や避難所運営マニュアルに反映するなど,本県の防災力を高めるための方策が必要です。

以上を踏まえ,避難確保計画の整備促進と地区防災計画の作成推進等の防災力向上について防災・危機管理部長にお伺いします。

【答弁】

 避難確保計画の整備促進と地区防災計画の作成推進等の防災力向上についてお答えいたします。

  はじめに,避難確保計画についてでございます。この計画は,近年の激甚化・大規模化する水害に備えるため,水防法等に基づき,浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の高齢者などの要配慮者利用施設に作成が義務付けられているものであります。

 このため,県では,平成29年の制度改正後,速やかに要配慮者利用施設の管理者約700名を対象に説明会を開催し,令和元年度は特に,市町村職員や施設管理者を対象とした避難確保計画の作成ワークショップを常陸太田市など9市町村で実施するなど,避難確保計画の作成を支援してまいりました。

 この結果,避難確保計画を作成した施設の割合は,平成31年3月末時点では約32%であったものが,令和2年3月末現在では速報値で70.4%まで上昇しており,施設において計画の重要性が認識されたと考えております。

 しかしながら,要配慮者の生命や身体を守るためには,全ての対象施設において計画を作成しなくてはならないことから,防災・危機管理部を中心に,土木部や保健福祉部,教育庁など,庁内関係部局が一丸となって,施設を支援していく必要があると認識しております。

 このため,これまでの取組で効果があった計画作成ワークショップを引き続き実施するなど施設の計画作成を支援しますとともに,各施設において作成した計画に基づく訓練を実施するよう働きかけるなど,要配慮者の安心安全の確保に取り組んでまいります。

 次に,地区防災計画についてでございます。

この計画は,災害対策基本法に基づき,地域住民が自発的に作成するものであり,作成の過程において,住民が地域の防災上の課題を共有しますとともに,住民同士のきずなを深めることにつながるなど,共助の取組を進める上で大変効果的であると考えております。

 また,市町村の地域防災計画に位置づけられることで,住民と市町村との連携が深まり,効果的な防災活動の実施につながるものと期待されております。

 しかしながら,議員ご指摘のとおり,県内において地区防災計画を作成した地域はまだ少数でありますことから,より多くの地域で計画の作成に取り組んでいただくことが重要であると考えております。

 このため,計画作成の主体となる「自主防災組織」の結成や活動の充実について,市町村や地域の自治会などに働きかけてまいりますとともに,「いばらき防災大学」や「自主防災組織リーダー研修会」を開催し,地域の防災リーダーの養成や知識の向上を図り,地区防災計画の作成につなげてまいります。

 また,議員からご提案のあった「地区防’z」の取組につきましては,地区防災計画の作成のために市町村の取組が大変重要でありますことから,県と市町村の担当職員で定期的に開催しております災害対応勉強会の場などにおいて,「地区防’z」の活動を紹介するなど,情報を広く共有してまいります。

 県といたしましては,避難確保計画や地区防災計画の作成をはじめ,水害からの逃げ遅れを無くすための備えを進めることにより,大規模災害時にも県民が適切に避難できるよう,地域の防災力の向上に努めてまいります。