令和2年第2回定例会 一般質問「災害時の避難対策について」(2)

(2)避難行動要支援者の避難体制の整備

【質問】

 避難行動要支援者の避難体制の整備について,お伺いします。

 令和元年東日本台風でも浸水被害が多く,高齢者や障害のある方で,自力での避難が困難な避難行動要支援者の方が被害を受けました。

 その中でも,福島県いわき市で,水が自宅に押し寄せて溺死した足が不自由な男性は,奥さん一人では,ベッドの上に避難させることすらできず,奥さんに「長いこと世話になったな」と言い残し,泥水に沈んでいったとの痛ましい報道がありました。

 逃げ遅れた要因は様々あると思いますが,今後も台風や地震などの大規模な災害が起きる可能性がある中で,このような悲惨な事象が二度と起こらないよう環境を整えることが必要ではないかと考えます。

 災害対策基本法により,市町村には避難行動要支援者を把握するための「避難行動要支援者名簿」の作成が義務づけられております。更にその名簿をもとに,一人一人が支援者そして,具体的な避難の方法をあらかじめ決めた個別計画を作成することを奨励しています。

 「避難行動要支援者名簿」は,県内全ての市町村で作成が完了しておりますが,避難行動要支援者の避難方法等について明確にする個別計画は,全員分を作成済若しくは一部の方の分を作成済が約6割の28市町村となっております。

 作成には避難行動要支援者の個人情報を記載することから,本人からの開示拒否や,中心となって支援する民生委員が不足しているため,支援者を見つけることが難しいという課題があり,現場では大変苦労されているとも伺っております。このような課題がある中で市町村の担当者は粘り強く取り組んでおりますが,大きな効果は見込めていない現実があります。

 しかし,冒頭のような悲劇を繰り返さないようにするためにも,普段から避難行動要支援者と接する方に個別計画づくりをサポートしてもらい,その必要性を広めてもらうなど,これまでとは異なる視点からの取り組みが求められております。

 兵庫県では,令和2年度からケアマネジャー,相談支援専門員等の福祉専門職が地域とともに避難のための個別計画を作成する取り組みを始めています。この取り組みは,平常時のケアプラン等の作成に合わせ,個別計画を作成・更新した場合に,福祉専門職が所属する事業所などに対し,各市町を通じて報酬を支払うものです。

 このように,防災と介護が連携して避難行動要支援者の個別計画作成推進を図り,その上で未作成の方の現状把握とその要因分析を行い,災害時において一人でも多くの方の大切な命を救えるように実行していく必要があります。

以上を踏まえ,避難行動要支援者の避難体制の整備について保健福祉部福祉担当部長にお伺いいたします。

【答弁】

 避難行動要支援者の避難体制の整備について,お答えいたします。

 災害時に自ら避難することが困難な避難行動要支援者につきましては,災害対策基本法により,市町村に名簿作成が義務付けられております。

 さらに,国の指針により,一人ひとりの要支援者の避難先や避難方法などを記載した個別計画の作成も求められております。

 このため,県におきましては,県地域防災計画に,市町村による名簿の作成を位置付けるとともに「茨城県避難行動要支援者対策推進のための指針」を策定し,市町村に対して,名簿の作成や個別計画の作成方法を示してまいりました。

 また,市町村担当者会議において,名簿や個別計画作成の参考となるよう,全国の事例集の紹介・配布のほか,未作成の市町村を重点的に訪問して助言を行うなど,市町村の取組みを促進してきたところでございます。

 これらにより,市町村におきましては,民生委員や自治会役員などの地域の関係者が情報交換等を行い,要支援者の把握から名簿及び個別計画の作成に向けた検討会を設けるとともに,民生委員等が個別訪問を行うなどの取り組みが行われてきました。

 その結果,避難行動要支援者名簿につきましては,一部作成を含めても,28市町村での作成に留まっている状況にございます。

 県といたしましては,できるだけ早く作成するよう引き続き働きかけるとともに,特に災害時の危険性が高い浸水想定区域や土砂災害警戒区域などに居住する要支援者の方につきましては,速やかな対応が必要でありますので,優先して取り組むよう市町村に働きかけてまいります。

 なお,個別計画の作成が進まない主な原因といたしましては,議員ご指摘のとおり,避難する際の支援者が見つからないことのほか,災害発生時に消防や警察などの関係機関に対して本人の要介護度や障害の程度などの個人情報が提供されることから,本人が作成を希望しないことがございます。

 このような中,議員からご紹介のありました兵庫県におきましては,介護計画を作成する介護支援専門員や,障害者の支援計画を作る相談支援専門員など,日頃から要支援者やその家族と接点のある福祉専門職に個別計画作成の調整役を依頼する取組みを進めております。県内でも古河市において同様の取組みが進められていると承知しておりますので,市町村に対し,防災と福祉が連携した優れた事例として積極的に紹介してまいりたいと考えております。

 また,こうした取組みを進めるには,福祉専門職の協力を得ることが不可欠ですので,これらの職種の県域団体への協力を依頼するなどにより,市町村をバックアップしてまいります。

 県といたしましては,今後とも,市町村に対して様々な助言を行うことにより,個別計画作成を促進し,避難行動要支援者の災害時の安心,安全の確保に努めてまいります。